羽原大介作・演出。
羽原の舞台に初めて連れて行ってもらったのは脚本家の今井雅子さんだった。
彼女が脚本を書いていたドラマの中の出演者が出ていたのか?
羽原さんと脚本家つながりで知り合ったのか記憶にない。
羽原大介は映画「パッチギ」や「フラガール」の脚本を手掛けている。
泥臭い昭和の暑苦しい群像劇を上手く脚本にするなあ!と感心していた。
そもそも、そういうテーマが好きな人だというのを
この「昭和芸能舎」のいくつかの芝居を見て確信した。
今回も1975年の東京に近い田舎町を舞台にしている。
1975年ということは昭和50年。
高度経済成長も一段落してオイルショックなども起き
徐々に日本が変化を始めようとしている頃。
あの頃確かに「ツチノコ」が良く週刊誌やワイドショーなどに
取り上げられてブームになっていた。
ウィークエンダーなどでレポーターが「ツチノコ」を
取り上げたりしたような記憶がかすかに残っている。
登場する村は、ツチノコがいる村としてブームに乗っかろうとしている。
土野幸太郎(及川いぞう)とその家族の物語。
幸太郎は長靴工場を経営している。
家族経営の小さな工場。次男がその工場を手伝っている。
妻は、後妻なのか?一番下の妹(高校3年生)を連れ、
幸太郎と再婚したのだろう。
近くの給食センターで調理のパートをしている。
娘は高校を卒業して、お台場アニメーション専門学校に
行きたいと思って親に頼み込んでいる。
しかし、父親は専門学校など学校じゃないと言って
大学に行かないのなら駄目だああああ!と言い続けている。
長男は高校を卒業して出版社に入って週刊誌の編集部にいる。
現在はデータマンという仕事をしている。
後にアンカーマンとして自分の手で
文章を書いて世の中のために発言をしていきたいと思っている。
そんな家族とその家族に絡む出版社や
近所の倒産してしまった雑貨工場の面々や
地域病院の看護婦や
村の青年団たちが出演する。
オープニングがいい。
みんなで大縄跳びをするのだが、
間近で多くの俳優たちが一心不乱に縄を飛ぶ。
ドーン、ドーンという音が響き
彼らの合いの手の声が聞こえてくる。
手には一人づつボードを持っている。
バラバラだった文字が俳優たちが縄跳びをしながら移動し
「ツチノコまつり」という並びになって暗転、
舞台が始まる。
今回この大縄跳びがとても演劇的であり、
身体を通じて生きる勇気を与えてくれた。
彼らの身にふりかかることは大変なことだらけだ!
エリート集団とはまったく逆の庶民の階級を描く。
弱いものが弱いものをたたく構造がそこから見えてくる。
彼らは何とかその構造から抜け出そうとするのだが、
なかなかうまくいかない。
自暴自棄になってあきらめるものもいる。
しかし、そのあきらめたものたちに
「あきらめないで」と物語の大きなうねりを利用して
羽原は呼びかける。そんな舞台だった。
大人になるとは?どういうことなのか?
清濁併せのむことによって開かれるものがあるのか?
その葛藤の中で彼らは日々生きている。