新聞の映画評を見てから映画を見に行くことはめったにないのだが、
単純に映画評を読むのは好きだ。
批評家や作家たちがその映画を
どのように解釈しているのか?ということに興味がある。
本作はたまたま待ち合わせの時間が開いたのと、
その待ち合わせの場所に近い映画館で上映していたことが決めてになった。
淡々と表情を変えないドライバーの話。
と新聞の金曜版夕刊の映画評に書かれてあった。
それがきっかけになったのだろう。
昨年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞した作品らしい。
監督はデンマーク人のニコラス・ウィンディング・レフン。
1970年生まれ。今、日本に来ているらしい。
R15指定。
何でかな?と思ったらその暴力描写が凄まじい。
頭蓋骨は足で蹴られつぶされ、目にフォークはさされ
ナイフで思いっきり手や首などをえぐるのだ。
拳銃でバンバンというものではなく
身体を強く意識させられるので
その暴力に対してものすごい嫌悪感がする。
ここまでやらんでもえええのに
というところを徹底的にやり尽くす。
そうして生き残っていかざるをえない状況の男を描いた映画。
それが米国の暗部であり監督はその暗部を冷徹に見詰め
リアリティを持って描こうとしたのだろうか?
強盗の逃走を代行するドライバー(ライアン・ゴズリング)が主人公である。
普段の彼はロスの小さな自動車工場で
メカニックとして働き、
カースタントの撮影があると撮影現場に行き
スタントの仕事をしている。
いかにもロスアンジェルスらしい。
その彼が同じアパートの同フロアの
子連れの人妻(キャリー・マリガン)と知り合うことになる。
ちょっとしたスーパーマーケットでの
クルマにまつわるアクシデントがきっかけだった。
彼女の夫は犯罪をおこし刑務所に服役している。
その夫が戻ってきてからドライバーは
ある陰謀に巻き込まれていく。
その男の妻と息子を陰謀の危険から逃すために
彼は身を張ってダークサイドに挑んでいく。
これは見方を変えると純愛のものがたりでもある。
キャリー・マリガンは静かで可愛い女を演じる。
「私を離さないで」を見たときと同じような
諦観が彼女の中に漂っている。
ものごとはどんどんとエスカレートしていく。
暗黒サイドの陰謀から彼らは逃れられるのか?
あれだけ人を殺してそれはないだろう!とも思いながら、
米国の暗部に確かにある恐ろしさが描かれる。
そしてこの国はサバイブしていかなければいけない国なのだ!
ということを強く意識させる。
自らと仲間が生き残るためにどうのようにすればいいのか?
をちゃんと考えること。
これが米国で生きていくということのベースになるのかも知れない。
撮影や照明、カースタントなどの技術が素晴らしい。
ハリウッドで培ってきた技術を、
大手映画会社の
マーケティング調査などで作られないような
映画の企画に活かして欲しい。
それが今後のハリウッド映画の未来を決めていくんじゃないかな?
多様な才能がさらにぶつかり合うことが
求められているのではないだろうか?
そういう意味でも今回のデンマーク人監督の起用はその一つだろう。
久しぶりに米国映画を見てそういうことを思った。