金曜日の16時の会。平日に代休を取った日は、
一人でいくつかの劇場や映画館を回る。
この日は渋谷から歩いてアゴラ劇場に。
まだ桜が咲いており気持ちいい。
散歩しながら横目で桜を見つつ向かっていく。
この「銀河鉄道の夜」は平田オリザが
フランスの国立演劇センターから児童劇を作ってくれという依頼に応えたもの。
2010年から2011年にかけて制作されたそうである。
東京での上演は今回が初めて。
この日は学校を終えたアゴラ劇場近くの小学生たちがたくさん見に来ていた。
補助席も入れていっぱいの中、見る。
引率の先生やお兄さんお姉さんが何人かいる。
いまはたくさんの大人たちが子どもたちを支えているんだなと思った。
子どもたちはまったく私語もなく集中して見ていた。
決して簡単なお芝居ではない。
しかし、そこから、何かを感じとってくれたのだと思う。
こうした小さな頃の劇場体験は一生涯記憶に残るだろう。
高校生の時に大阪の「茨木市民会館」で学校の仲間と授業の一環で
見に行った映画「自転車泥棒」はいまだに鮮明に覚えている。
お金がないものたちに対しても、こうして映画や演劇を見られるような
環境があるということはとても貴重。
本公演は、女性の俳優5人が出演する。
「銀河鉄道の夜」という物語は良く知っているようで
実はあまり知らない。
先日観た「星の王子さま」とも
似ているところがあるなあと思った。
ジョバンニとカンパネルラは
銀河鉄道に乗って銀河を旅する。
「天の川」は英語では「milky way」という。
そんな授業でのエピソードが語られるところからこの舞台は始まる。
と、同時にこの舞台は仲間の死を描く物語でもある。
カンパネルラが川に落ちた仲間を助けようと
川に飛び込むのだが自らが死んでしまう。
その死を、ジョバンニはなかなか受け入れることができない。
その死を受け入れる道程としてこの「銀河鉄道」の旅があるんだ!
物語を通じて少年の心が平穏になっていく。
その過程を宮沢賢治はこうした小説の形にし、
そのエッセンスを平田は取り上げ演劇にした。
後半、ジョバンニが叫ぶところにグっと来る。
友人の死にとまどい、驚き、苦悶し、最後にそれを受け容れる。
そのプロセスが象徴的に描かれる。
胡桃の音を鳴らし合いながら二人の魂の交流はいつまでも続くのだ。
この演目は今年、全国を巡回するそうである。
地元にやってきたら是非、お子さんと見てください。
もちろん子どもたちだけで行くのもとてもいい経験になるだろう!