副題は、私たちは共に学んだ―歴史の授業・全14課―というもの。
ナシャ・クラサとはポーランド語?で「同級生」という意味。
10人の同級生だった人たちの小学校入学からその後の半生が描かれる。
四角い舞台を三方から取り囲むような仕立てになっている。
奥の階段から出演者たちが一人ずつおりてきて椅子に座る。
学校の机と椅子に。
一斉に彼らは歌を唄い出す。
小学校入学に関する歌である。
劇団員10名が懸命に稽古した成果が表れていた。
ハーモニーが美しく、その声が見ている私たちに沁みとおるようだった。
そして、このシーンは
出演者たちが一斉に学校に入学してきたシーンだなとわかる。
そのクラスには数人のユダヤ人と残りのポーランド人がいた。
その後の彼らの歴史が彼らの口から語られる。
俳優たちの語りを、ベースに様々な事実が語られる。
椅子や机を効果的に使った演出がいい。
人に見立てた演出をする。
ユダヤ人の同級生だった女性を輪姦するシーンがあるのだが、
机を彼女の下半身に見立てて演技をする。
その抽象性が逆に、その怖さを増幅する。
同級生をいたぶり、殺しさえするなどということが
本当に起きたならば、どのように対処するだろうか?
最初のポーランド人によるユダヤ人の虐殺は1941年に起きた。
これは、ロシアが占拠していたポーランドが
ドイツ軍の侵攻によって占領されてしまい
ナチズムの統制下にはいった時である。
ナチスはドイツだけでなくポーランドでも、
ユダヤ人を粛清(民族の浄化?)という名のもとに虐殺していた。
その後、戦後になっても、ユダヤ人の弾圧が続いたことを知り驚いた。
1968年の「三月事件」というのも
その始まりとなったらしい。
ユダヤ人たちは戦後、パレスチナ地区の領土を
イスラエルという国として割譲され、
そこに移住して新たな国家を建設する。
それが、いまも深い影を落とす、パレスチナ問題の発端だった。
椅子や机が床に倒され押し付けられ
何度もどんどんと床にうちつけられ
さらにベルトなどで鞭打ちなどが行われる。
ユダヤ人たちへの暴力をこうした形で描く。
ポーランド人が何故、仲も良く同級生だったユダヤ人仲間をいたぶるのか?
また、彼らがそのように変化してしまわざるを得なかった理由は?
そこに何か人間を理解する鍵があるのでは?
濃密な2時間40分だった(途中15分の休憩あり。)
演出:高瀬久男