何とも奇妙でシュールな寓話劇が完成した。
城山羊の会の山内ケンジの描く世界は大きく分けて二つある。
日常を扱ったものと、今回のような寓話劇。
もちろん、どちらもシュールな表現が描かれるのだが、
寓話劇のカタチをとると、その奇妙さがより倍増する。
スキラギノエリという国の王室の話である。
海外の翻訳劇的なカタチを取りながらも
山内ケンジの完全なオリジナルとなっている。
時間をもてあましている退屈な王妃(石橋けい)が妖艶な役を演じる。
エッチなシーンがたくさん出てくる。
王様は宮崎吐夢。
宮崎の、のほほおおんとした気の弱い感じが
今回の王のキャラクターにあっている。
そりゃ、そうか、
山内ケンジは出演者たちを念頭に置いて戯曲を書いているから、
キャラにあった役と台詞になる、というのは、当然と言えば当然。
王妃の家来(ゴルク)は岡部たかし。
王子様であるスキラギは山口奈緒子が演じる。
スキラギは、悪いことばかりしていて、
王も王妃も、そして家来たちも手を焼いている。
そこに新しい家庭教師がやってくる。
イスラム圏から来た家庭教師?というような設定。
うさんくさく、うそくさい家庭教師を演じるのは怪優の三浦俊輔である。
さらに修道女ヨハンナとして青年団のブライアリー・ロングが出演する。
6人だけの舞台が楽園という小さなスペースで演じられる。
L字型になった観客席から8畳間くらいの舞台を囲むようなカタチで見る。
お城の控室?みたいな場所だろうか?ソファが一つ置かれており。
王様用の椅子がその横に。
王室の人々と教師と聖職者たちが繰り広げる人間臭い物語。
登場人物の役まわりだと、純粋で聖なるもの、
あるいは人の規範になるようにしていかなければならない人たちが、
それとは違う人間臭い行為を繰り返す。
それがとても寓話的で面白い。
いろいろな男と関係を持つ王妃、
王妃の息子である王子は前国王との間に生まれた子ども。
王子は大人の欺瞞に満ちた日常を徹底的にこき下ろす。
本当のことは、そこには何もない。
というような意地悪な視点がスキラギを通じて描かれる。
しかし、実はそれが一番純粋な視点なのでは?
というパラドックスに陥ってしまう。そんな不思議な物語。
突然、劇中で歌が唄われたりもする。
肩のチカラの抜けた、艶笑劇とも言えよう。
しかしながら、山内ケンジはその中での品格を保つ。
それが山内らしいとも言える。
50年代のビリーワイルダー的な雰囲気を残しつつ、
カタチを変えたイプセンの翻訳劇のようなテイストもある。
とにかく楽しめる1時間45分。
これを、書いていて、また見に行きたくなった。
17日まで。
(これは、劇場で手に入る戯曲。500円)