この舞台に出演している板倉チヒロ君からメールを頂いた。
へえ!?板倉チヒロが「タカハ劇団」に出るんだ!と思った。
タカハ劇団を最初に見たのは、高円寺で再演された「モトロフカクテル」
というものだった。全共闘を描いたもの。
若いのにこうした重厚な物語が書けるのかと驚いた記憶がある。
そして、前作の「パラデソ」もとても印象深い舞台に仕上がっていた。
「パラデソ」はある新興宗教について描かれたものだった。
高羽彩の20代とは思えぬ筆力に感心する。
今回は、福島第一原発の事故の影響が強い作品となった。
ここでは具体的に語られないが明らかに、そのような状況が描かれている。
ある「ネジ工場」が舞台である。
上手に土間があり外に続くガラス戸と工場に続く通路がある。
上手には6畳ほどのあがり框状になった和室があり、
そこから奥の台所、二階へ続く階段につながっている。
喪服を着た背の高い美人の女性(水谷妃里)と同じく喪服を着た
道学先生の女優かんのひとみが土間にいるところからこの舞台は始まる。
この村では、次々と人が死んでいる。
喪服をしまわないでまた使うからとハンガーにかけてある。
そんな状況の中、ネジ工場では三兄弟が懸命に働いている。
最初、ぎこちない感じで始まったのだがだんだんとこなれいった。
後で考えるとこれも演出だったのじゃないか?と思った。
水底深くに潜って行くような効果音が時間経過を表す。
この「ネジ工場」に、亡くなった父親の腹違いの子どもがやってくる。
この「工場」を親父の遺言に従って譲渡してくださいと言いに来た。
彼らは、三兄弟の家に同居する。
それが背の高い美人の灯(あかり)(水谷妃里)である。
彼女は彼氏と一緒にやってきた。いまどきのイケメンの男。
彼は灯に金を無心し暴力をふるう。
彼女から金をせびってはその家を出て行き遊び呆けている。
工場では昔から三兄弟が懸命に働き
FAXで送られてくる発注書をもとに納期目指して懸命にネジを作る。
以前、父親が生きていたころ、ここで作られたDネジが宇宙に行き、
それがいまも地球の周りを回っているらしい。
典型的な三ちゃん工場。
一番下の弟が家事をこなす。
この三兄弟の描写が素晴らしい。
家族の基本みたいなものが描かれ、
最初ぎくしゃくしていた腹違いの妹とも打ち解けるようになる。
この基本的な物語を軸にして、近所に住む友人や、
宅配便の男(板倉チヒロ)が彩りを添える。
しかし、ここで起きた様々な事件も大きな世界の流れからは
逃れられない。
その絶望感を高羽は絶望のままでは終わらせない。
人が生きて行くというのはそういうことなのかも知れません!
と20代の作家に教えられる。
三兄弟は、長男=有川マコト、次男=夏目慎也、三男=山口森広。
24日まで。