池田鉄洋作・演出。
バンパイヤが出てくる学園ミュージカルコメディというような舞台だった。
大きな本多劇場の空間を上手く使っている。
「表現さわやか」と言えば、駅前劇場みたいな濃密な空間で
各俳優たちがそれぞれの個性を生かしたネタを演じるというような感じだと思っていた。
今回は客演が豪華。及川奈央、小林顕作、などが彩りを添える。
10名+サプライズゲストの俳優1名が舞台の上で何役も演じる。
イメージがイメージを増幅させ、一本の筋の通った舞台から
派生したエピソードがそこに絡む。
及川奈央がバンパイヤの女子高生を演じる。
佐藤真弓演じる、うぶな少年が及川に襲われる。
冒頭のシーンが印象的である。
キスをする及川と佐藤。
大きな赤い月がゆっくりと窓の外で動いている。
とても映画的なシーンである。
そして、この高校に次々とバンパイヤが増えていくというもの。
その途中から何故か給食室の職員たちが
給食室に立てこもり占拠を始め、学校は混乱する。
給食室のバリケード封鎖の理由は、
火災訓練でいつも、火元が給食室であるということに抗議して。
火元を撤回すべく給食のおばちゃんたちは立ち上がる。
時々、突然のミュージカル調の歌が入る。
事前に録音された聞こえやすい歌が流され、
その部分がクチパクとなっている。
生で唄わないことでとても見やすく聞きやすくなっている。
日本のこうしたミュージカルっぽいものは
俳優たちの歌と演奏を聞かせたいと思い、生で無理に呈示して失敗することが多い。
そうなると、曲も歌詞もが聞きとりにくくなり、
さらに歌の上手くない俳優のそれを聞いていると
しょぼーんとしてしまうのだが、それが今回はない。
事前にきちんと録音されミックスされた楽曲が流れている。
こうした努力がいい効果を生んでいた。
舞台経験が豊富な池田ならではの試み。
今回のネタの中で一番面白かったのは、動物を飼っている小屋と、
バンパイヤになった鳥にかまれたオジサンたちのエピソード。
鳥のようなサラリーマンになったおじさん三人が
新橋烏森口に飲みに行き、その後日比谷公園に移動する。
その光景がシュールでとても面白く、目が釘付けになった。
あの芸は今後も続けていって欲しい。
鳥サラリーマンという新たなコンテンツが出来そうな予感。
池田の描く世界はどこか映画的である。
池田が大の映画ファンというのもあるだろう。
この新たな学園シュールコメディミュージカルは
貴重な体験の出来る場所となった。
小林顕作の突っ込みが、ときどき、リアルな感覚となって観客に届く。
舞台終演後のカーテンコールで池田が撮影をして宣伝してください!と
あったので撮影しました。