テレコム・ジャパンという制作会社があった。
もともと、TBSを退社して「テレビマンユニオン」という
番組制作会社を作った人たちが、
さらに「テレビマンユニオン」から独立して作った会社だった。
僕は1985年に新卒採用で入社した。
同期が16人居た。
16人は一緒に1ヶ月の研修を受け、いつも一緒だった。
同期の一人、Kが昨年末に急死した。心不全だった。
突然のことで、結局、Kの葬儀に顔を出すことが出来なかった。
そして、ときどき思い出す。
「京都プロジェクト」の件で、Kにメールを送ったままになっていた。
結局、Kからの返事をもらわないままだった。
Kと一緒の会社で番組制作を続けているNが、
今年になって文化庁第56回芸術選奨新人賞を受賞した。
朝日新聞でたまたま、その記事を見た。
Nとは、新人研修の共同制作で一緒のチームだった。
それから、お祝いを兼ねた同期会をやろうと思い立った。
Kのこともココロの片隅にひっかかっていた。
約半数が集まった。20数年前の面影は変わらなかった。
当時の僕は、自分がどうなるのかもわからず不安で一杯だった。
20数年たって、同じような仕事を続けて来た自信が、
ようやく人の話をきちんと聞けるようになった。
また、人生への諦観も感じ始める年になってきた。
人生のゴールまで自分が出来ることが何となく見えてくる。
そんな年齢になった。
みんなは、どうだったのだろう?
面白かったのは、8人とかで飲んでいると話題がバラバラになり
席ごとに会話が行なわれるのが常であるのが、
ひとつの話題をみんなが集中して聞いていた。
そして、会話はある節度と敬意をもって交わされていた。
僕は、この同期たちを誇りに思った。
Nがもらったのは、放送の分野での新人賞だった。
朝日新聞には「詩のボクシング」で受賞と記されていた。
てっきりそうだと思っていた。
聞くと、
他の新聞は「シリーズ憲法~第96条・国民的憲法合宿」と
書かれていたそうだ。
朝日新聞の記事は間違っていたらしい。
メディア・リテラシーのことについて、改めて思う。
いったい、本当の情報とは何なのか?
考えさせられた、エピソードだった。
階段を上がって店を出ると、ものすごい勢いで雨が降っていた。
先に逝った、Kが降らせた雨じゃないだろうか?と思った。
雨の中、僕たちは三々五々になり、
それぞれの生活に戻っていった。
自宅近くの駅に着いたとき、すっかり雨はやんでいた。