怖い舞台だった。
何が怖いって人の気持ちが拘束されるのが怖いのじゃないかな?
だから「纏足」(てんそく)という言葉が使われているのだなと感覚的に思った。
こまばアゴラ劇場の中に入ると入口側と奥の壁側に客席があり
舞台を挟み込む形でみる状態になっている。
真ん中の舞台はバスケットコート?を模している。
小さなバスケットコートの会場で左右からそれを見るというような配置。
ネット状のパーテーションで客席と舞台は仕切られる。
舞台は、物凄いスピードの
バスケットのパス回しから始まった。
東京タンバリンはいつもクールでスタイリッシュなところがあり、
そのギリギリのラインを確実にキープしている。
今回、劇中で映画監督の「ミヒャエル・ハネケ」のことについて
語るシーンがあったが、まさにハネケの映画を見ているみたいだった!
クールで上品なトーンの中で潜むヒトの悪意を描く。
その悪性みたいなものはすべての私たちのなかにあって、
普段は無意識なのだがそれをこじあけ無理やり照射する。
そんな印象が残る舞台だった。
ということは、観終わって何らかの強い印象が残るのは確実であり、
その印象について考え続けることになる。
そういうところも
この舞台とハネケの映画の似ているところだな!と思った。
舞台は大きく分けて二つのシーンで構成されている。
1つめはレンタルビデオ屋さんの店頭と休憩室。
そしてもう1つは図書館。
折り込みのキャスト表には「図書館」と書かれていたが、
この「図書館」では独特なお仕事が行われている。
職員は任意に図書を選んでそれを読む。
最初にページを開くと読み終わるまでは休憩も出来ないし
もちろん私語も禁止。
読み終わるとそのデータが記録され何らかの
サーバーみたいなものに書きこまれるのだ。
「自炊」と呼ばれ、現在、実際の図書をバラバラにしてスキャンして
それをデータ化するという「商売」というか「作業」がある。
この「図書館」ではその「自炊」みたいなことが行われている。
新人はすぐに無駄話をしたり休憩をしようとするので、
その本をまた最初から読むことになる。
いくら速く本を読んでも時給は同じ。
ベテランの職員たちは徐々にそこに順応していくのだが、
順応していくことでアンドロイドやロボットのようになっていく。
それは感情がなくなっていくという意味だが。
そして彼らは淡々と図書を決められた時間内で読み、帰っていく。
「お仕事ですから」という言葉で片付けられているが、
本を読むと言うことの楽しさが
ここでは完全に否定されている。
この図書館に出てくるキャストがもう1つのシーンの
レンタルビデオ屋さんでも登場する。
こちらはものすごくリアルな世界。
社員の店長とアルバイトたち。
店長はとても嫌な奴で、このバイト先には嫌な奴が
嫌なところばかりを出すような環境となっている。
会話の途中ですぐにスマホにかかってきた電話を取り会話を中断する女。
自分が少し可愛いことを知っており、それを武器にする女。
その女を嫌っている女たち。
社長の息子と言われているベテランのアルバイター。
ここに30歳過ぎてフリーターをやっている男性が
新たなバイトとしてやってくる。
そこで様々な葛藤が起きる。
ここではきちんと「仕事」をするというのはどういうことか?を考えさせられる。
「お仕事」を考えるという意味では
二つのシチュエーションは同じ。
そして「纏足」という名の拘束も同じ。
その拘束をどのように解き放つのか?
自分の中の「悪意」を再認識できる舞台です。
ある意味、必見!
24日まで!