五反田団の前田司郎が自ら傑作!(W)と称している舞台の再演。
というか、この後、この舞台をヨーロッパで公演するので、
その予行演習を兼ねた公演をやってくれた。
フランス、スイス、ハンガリーと旅公演をするらしい。
公演時には字幕が壁に投影された。
僕が見に行ったときは「ハンガリー語字幕」付きの公演。
五反田のアトリエヘリコプターは前田司郎の実家だった
工場を改装したところ。
こうしたスペースが都心にあるのは何とも羨ましい。
稽古などがここで簡単に出来てしまう。
今回、行ってトイレが綺麗になっているのを見て、
進化しているアトリエヘリコプターを感じた。
この五反田と大崎の間の場所は都市の再開発で
多くのタワー型マンションが立ち並び便利な新興住宅街になっている。
こうしたマンションの住人が夜、ふらっと公演を見に来て、
その後「ビストロ魚金」なんかで舞台の話をしながら飲んでいる
なんて最高だ!
ニューヨークやロンドン、パリみたなところでは
そういう生活をしている人が昔からたくさんいたのだろう。
東京もようやく、そんな街になってきたのかな?
都市が成熟していくというのは、そういうことなのかもしれない。
いづれ中国やインドなども成熟していくのだろう。
兄、前田司郎、姉、後藤飛鳥、その弟、黒田大輔とその妻、木引優子(青年団)
の4人芝居。いいキャスティング。中でもこの舞台では黒田大輔の活躍が印象的。
身体を極端に使った黒田の奇妙な動きが繰り返される。
前田司郎お得意のものごとが様々に変容するお話。
時空が直結し観客はそのイメージの中で遊ぶ。
いつも前田の作品を見ていて思うのだが
まるで落語を聞いているような気分になるのだ。
観客は、俳優が舞台で演じているものを見て、
海に行ったり温泉にいったり、細長い木の穴を通ったりするのを共有体験する。
それを、ミニマルな小道具だけで表現する。
今回は椅子4脚とタオルだけで表現がなされる。
落語では扇子と手ぬぐいだけで表現されるのと同じように。
だから舞台は限りなく自由になる。
何ものにもなりえる場所。
観客はそのイメージの海の中で遊ばせてもらえるのだ。
今回、特に笑ったのは黒田がお魚になるところ。
僕にはどう見てもウツボにしか見えなかったが
ほかの観客はどう見たのだろうか?
話は「太郎」というペットが死にその亡骸を海に捨てにいくというもの。
しかしエンディングで「太郎」は別のものになっていたという。
タオル1枚だけでで表現された棺桶は、
亡骸とともに海の彼方へ流れ去っていくのであった。