イキウメが過去にやった公演の短編集を再構成したもの。
全部で6話からなる短編を、まるでひとつの話のように再構成している。
同時並行的にいくつかのエピソードが行われていても
観客はそれをきちんと見られてしまうものだな!
ということが良く分かる。
作・演出の前川知大の仕事の完成度の高さには毎回、驚く。
いつもの俳優たちのチカラというのもあるのだろうが、
ここまで仕上げるのには大変な手間と暇が必要だろうと思う。
毎回毎回、それをやり遂げる根性に感謝!
証拠に、イキウメのファンは確実に増えて来ており、
なかなかチケットが取れない劇団となっている。
しかも、面白いことに若い層から年配層まで
バリエーション豊かな人たちが見に来ている。
一度見ると、その完成度の高さに
また見に行きたくなる劇団の一つではないだろうか?
これらの短編集を見ていて、短編の名作とは?
みたいなことを考えていた。
中学生の頃に良く読んだ、星新一や筒井康隆、そして芥川龍之介、
最近では村上春樹だろうか?
こうした良く出来た短編集を読むときの喜びは何ものにも代えがたい。
その感覚を、イキウメの前川知大は舞台上で再現する。
しかも演劇的に。
演劇的に短編を表現するとは?
各俳優の身体と動きなどが感じられるということ?だろうか?
でも、それだけではないな。
短編小説が完全な言葉と想像力だけの世界とするなら、
演劇は俳優の身体と言葉とさらには小道具や衣装、大道具が加わる。
その特徴を最大限に生かして前川は表現しようとする。
グレイを基調としたセットは
背の高い本棚が数竿。
棚に置かれている本もグレイのカバーがつけられており、
時々何冊かのカバーが原色で、それが美しい。
俳優たちの衣装はそれと対照的に美しく明るい色を使った衣装を着ている。
伊勢佳世が淡いブルー、岩本幸子が赤というように。
各、出演者がそれぞれの色を身にまとい演じる。
引きで舞台を見るとそれが現代美術のように見えてくる。
俳優の配置や小道具、テーブルの配置などにもこだわっている。
奥にはいくつものグレイの段ボール箱が積み重ねて置かれており
それが壁を構成している。壁の高さは3メートルくらい。
本棚は8メートルくらいあるのではないか。
本公演では6つの短編集のエピソードで構成されている。
しかし、これらのエピソードがひとずつ紹介されるわけではない。
エピソードは細切れにされてその間に別のエピソードが挿入される。
前川の脚本は人間本来の本質を戯画化し寓話化する。
それを楽しめる人にはイキウメの公演は本当に楽しいものになるだろう。
今回の公演では、輪廻とか労働とか感情を表現するとか、
必要なものだけを狩るものと欲望のおもむくままに狩るものとの対比とか
が表現されている。
これは明らかに現代社会を風刺した寓話劇であるとも言える。
様々な読み方が出来るので、何度見ても飽きないだろう。
「もう一度見に行きたい!」と、見終わってすぐに思う舞台だった。
12月2日まで。