桜井進の名を知ったのは朝日新聞の土曜日に折り込まれている
別冊の「be」というもの。
そこのフロントランナーで紹介されており、
どんな人だろうと興味を持った。
1968年山形生まれ東京工業大学理学部数学科を出て、
誰にでもわかりやすい形で数学の面白さを伝える
ナビゲーターという仕事をしている。
ギリシア時代、ピタゴラスなどは、こうした役割を背負っていたのか?
で、本書を借りて読んでみた。
とても読みやすく楽しい。
数学のうんちくがたくさん詰まっている。
数学にまつわるトリビアな雑学事典とも言える。
この中で一番興味深かったのが
桜井さんが数学(算数)の原理的なことを丸暗記的ではなく
わかりやすく解き明かしてくれるところ。
例えば、分数の割り算の項で
桜井さんは計算をするときに何故、割る方の分母と分子を
ひっくり返して掛けるのか?ということに関して
分かりやすくきちんと説明してくれる。
それにはまず、そもそも分数とは?割り算とは?
というところから解き明かして説明しなければならない。
その時に便利なのが図解である。
割り算とはあるものを分割していくこと。
良くチョコレートなどで例えられるが
5分の1とはという概念が良く分かる。
それを割るとはどういうことか?ということが?
それを5分の1で割るとは?
このように考えていくと
シンプルにこの分数の割り算の公式が理解出来る。
ここに数学(算数)の根本的な面白さがあると桜井さんは力説する。
ただ単に公式をその意味を知らないで丸暗記しても、面白くない。
この、面白いと思う気持ちこそ
学ぶというモチベーションにつながるのではないか?と思うのだ。
数学の難解な問題も、その延長線でどんどんと解答
がなされていったと書かれていた。
ペレルマンが解決したと言われている
「フェルマーの定理」に関しても同様。
概念についてということも考える。
何故ゼロで割ることが出来ないのか?
ということを桜井さんは順を追って説明してくれる。
無数に解があるものと解が特定できないものは
「計算が定義されない」ものとみなされる。
だから答えが一つに定まらないものは、
ルール自体が違うので
ここでは考えないでおきましょうとしたに過ぎないということがわかる。
こうした根本的な考えるということの面白さを
本書は様々な事例を使って教えてくれる。
僕は大学生の頃、公文式算数教室でアルバイトをしていた。
この塾と相性が良かったのか、アルバイトは4年間続いた。
そして、このアルバイトを通じて生徒に教えることによって
原理的に説明するということを学んだ。
小学生レベルの話であったかも知れないが、
それを理解した子供たちの
顔つきが変わるのを見るのはとても面白かった。