作・演出 市原佐都子。
市原さんは桜美林大学出身。
その時に平田オリザの薫陶を受けたのだろうか?
在学中に本作の元となった作品「虫虫Q」を発表する。
これを基にした戯曲「虫」が第11回AFF戯曲賞優秀賞を受賞した。
過去にこれを、見た人の評判を聞いたのだろうか、
場内はぎっしりと観客で埋まっていた!
本作を見るきっかけになったのは
ジャーナリストの木村元彦さんに紹介していただいたから。
木村さんと飲んでいて、BATIKの話になり、
前回の「おたる鳥をよぶ準備」公演がとても面白かった
という話題で盛り上がった。
木村さんにBATIKが面白いですよ!とススメたのが
本作の作・演出家である市原佐都子さんだったそうである。
そういう縁もあり、アトリエ春風舎という
個人的にとても好きな劇場で公演が行われることもあり、行って見ることにした。
開演15分前に到着するとほぼ満席状態。
一番後ろの席が空いておりそこに座る。
1時間45分の公演。しかし、それ以上の演劇を見たと感じられるほど
身体にドーンと届いてくる演劇だった。
身体的な感覚を刺激するような仕掛けがこれでもか!
というくらい行われる。
そうした身体的な違和感を
感じながらこの演劇を見つづけるのは
観客としてもなかなかのバトルだった。
見ているものたちに、何かを感じて欲しい!
ということを強烈に投げかけながら舞台は進行していく。
市原の冒険精神にあふれた戦いを目の当たりにしているようだった。
また、BATIKと同じように、この戯曲からは
「女性性」というものがあふれ出ている。
決して清純で美しいというものではないもの。
そこに女性の本質の一側面があり、
市原はそこを照らしだす。
西川美和の描く映画のようでもある。
身体を誇張しながら喋る女の子たち、
笑いつづけながら喋る女の子、
ほとんど喋らず、話す時にはマイクを持ってボソボソと話す女の子、
そうした様々な現代の女性をデフォルメした表現が
目の前で繰り返される。
この身体感覚を駆使した表現技法は、
チェルフィッチュやままごと、マームとジプシーなどとも違う
別の表現スタイルで行われる。
市原は表現のオリジナルを追及する。
お弁当やさんで長くアルバイトしている女性が
この舞台の主人公的な役割を果たす。
彼女は朝起きて、お弁当を食べ、お弁当屋さんで働き、
あまったお弁当をもらって仕事が終わって家に帰ると、
そのお弁当を食べながらビデオを見て寝る、
という毎日を送っている。
家賃と光熱費と雑費以外にはお金を使わない生活が繰り返される。
この生活を冷ややかに見る
いまどきの女の子たちとの対比が描かれる。
市原は私たちにこのような現実をドーンと呈示する。
観客は感じながら考え始める。
どの生き方が自分にとって、本当にいいのだろうか?と。
今を生きる、女たちの
これからの人生を考えるきっかけになるような舞台である。
永く永く気持ちの底に残りそうな。
次回作も楽しみ。24日まで。