「東京デスロック」が4年間の時を経ての東京公演。
作・演出の多田淳之介は2010年、
劇場「きらりふじみ」の芸術監督になっており、
埼玉県のふじみ市での公演を中心としそれ以外の地方公演だけを行い
東京では公演を行わないという宣言をしていた。
そして、2013年ようやくその禁が解け、
平田オリザの代表作「東京ノート」を上演することとなった。
本公演には「東京」ということについての様々な解釈が登場する。
「東京ノート」「東京公演復活」「東京デスロック」
と。外部に居ると逆により強く意識することは多い。
例えば、海外に行った日本人が、
日本のことを強く意識するようになるのと同じ構造。
本作には多田の東京に対する想いと、
20名にのぼる俳優たちの東京への想いが凝縮される。
1階の受付で荷物を預け、靴を脱いで劇場に入るという形式。
入るとその美術に驚く!
これ以上書くとネタバレになるから書かないが、
とにかくまず観客は、劇場内である種のとまどいが起きるだろう。
とまどいながら、その環境に合わせていくことが本公演では求められる。
多田の独自の解釈で行われた「東京」に関するオープニングがカッコいい!
街頭のプロジェクションマッピングなどを使ったイベントでも
十分通用するようなアイデアが満載のオープニングだった。
モニターが会場の何か所かに設置されており。
そこからメッセージが書かれたタイトルが上映される。
「Where are you from?」
絶え間なく流れ続けている音楽とともに、これを楽しむのが
この多田流の「東京ノート」。
テキストは平田オリザの戯曲に忠実。
しかし、今回の手法では新たなものが見えてくる筈。
戯曲の中で、「どのようにものを見るのか?」ということが、
何度も違ういい方で書かれているのだが、
その「ものの見方」ということについて
強く意識されるような構造となっている。
稽古場で俳優をどのように見ているのか?
そして俳優は演じているとき、どのような見方をしているのか?
みたいなことが身体を通じて獲得される。
これが本公演の一番の特徴だったのではないか?
また、弁護士(永永正顕)と学芸員(内田淳子)が話し合う台詞を聞いて、
平田オリザが最近書いた
新書のタイトル「わかりあえないことから」(@講談社現代新書)
ということについて、この「東京ノート」の戯曲に
ちゃんと書かれていたんだな!ということがわかった。
2時間20分。1月20日まで。