上演時間休憩なし2時間55分。
でも、あっと言う間だった。
ものすごい密度が高く情報量の多いトラッシュマスターズの舞台は
本当に見ごたえがある。
今回、描かれたのは尖閣諸島の問題。
日本と中国が尖閣諸島をめぐって今後、
どのようになっていくのだろうか?
その一つの事例を、作・演出の中津留章仁は呈示した。
舞台は2幕からなる。
まずは、中国は北京の日本大使館。
その公館の中。
そこには中国人の反体制家、韓国の外交官そして大使館の大使と
そこで働く外交官たち、さらに中国人の運転手や家政婦がいる。
ここで尖閣諸島の問題が話し合われる。
共産党1党独裁の国家。
北京や上海に生まれた中国人は自由に仕事や留学などが出来る。
一方「農民工」と言われる地方の農村出身者はそういった自由がない。
彼らの格差が描かれる。
「農民工」は都会で普通に働くことが出来ない。
そういう政策を中国政府がとっているから。
したがって「農民工」の社会に対する不満は高まる。
そこに登場して来たのが「反日」という感情である。
政府をストレートに批判出来ない彼らは、
「反日」という御旗を掲げてデモや暴動に参加する。
「動員の革命」のギリギリのところで
なんとか留めている中国共産党。
彼らの動向に恐怖を感じながらも、
現状を維持する方向で国家は進んでいく。
ここで中津留が問うているのは「国家」とは?「個人」とは?
そして、「住む場所」とは?ということ。
人間個人がそこで生きる!という根本的なことがそもそも
抜け落ちているのではないか?
と中津留が警鐘を鳴らしているように思えてならなかった。
尖閣諸島問題が資源や領土問題となり「国益」という名のもとに
個人が犠牲になる。それが果たして幸せなことなのか?
多様な生き方を呈示して観客に考えさせる。
そして、この舞台では戦争が始まる。
尖閣諸島をめぐる攻防が描かれ、中国人の漁民と
海上保安庁とのいざこざが、国家レベルに発展していき、戦争となる。
当局は戦争とはなかなか認めたがらない。
その流れとかがとてもリアルで身につまされる。
そうして2幕が始まる。
休戦した尖閣諸島に日本国の人々が移住をし、
役場を作り生活を始める。
そこには同時に中国からも人がやってきて一緒に暮らし始める。
日本政府は中国人に対する強制撤去をここでは求めない。
緩やかな日本人と中国人のコミュニティの中でのドラマが始まる。
そこで起きるのが・・・・・。
圧倒的な筆力で観客をぐいぐいと引っ張っていくのが中津留の真骨頂であり、
そのテンションが3時間近く持続し飽きさせない。
こんな舞台がたった1週間しか上演されないなんて!…。
必見です。3月20日まで。