青年団若手自主企画。
作・演出の玉田真也は、今年の秋、MITAKA Next Selection 14th に
参加することが決まっている。
今回、玉田は次男の宗次郎役で出演している。
舞台は8畳間。
ふすまの奥に廊下、廊下の下手側が玄関、
そして部屋の上手側にももう一つ部屋がある。
ある地方の街のアパート。
ここに宗次郎とその妻(小瀧万梨子)が住んでいる。
ある日、兄が突然やってきて、妻はそれを兄と知らず…。
というところから舞台は始まる。
構成がしっかりしており、家族や兄弟、
夫婦の関係が兄の闖入によって微妙に変化するのが面白い。
宗次郎は高校の世界史?の教員をしている、
妻もパートみたいなことをしており、時々、
習字教室に通っている。
兄は東京でしばらく暮らしていたのだが
10年ぶりに故郷に戻ってきた。
弟の結婚式にも参列しなかった兄が突然。
兄は、弟の家に居候をして、時々アルバイトをしながら、
だらだらと日々を過ごしている。
厚かましく、粗雑な兄に対して嫌悪する弟の妻。
弟の宗次郎は気が弱くはっきりと兄に言えない状況が続く。
ある家の決まりごとが兄の存在によって崩れていく。
その過程が面白い。
一見普通のことのようだが、それまでの家族と、
新たに結婚した家庭との葛藤が
カレーのエピソードなどで象徴的にあらわされる。
兄は、ときどき宗次郎の車を借りて出掛けている。
車がないと生活できない地方ならではのエピソード。
兄がアルバイトで知り合った女友達(井上三奈子)と
デートに行くために弟の妻に車を借りるシーンが印象的だった。
安部公房の「友達」を彷彿とさせる。
これは安部公房の「兄弟」という題名でも成立するような戯曲(W)。
兄はそこである借りを弟に作ってしまう。その後、兄は…。
こうした、ことって本当にあるんじゃないだろうか?
とも思えるような奇妙なトーンを持つ演劇だった。
静かなポツドール的世界観演劇?
それとも、
やさしい日常を描いた「闇金ウシジマ君」?
とでも言えるだろうか?
劇的なことは舞台の外で起きているという
平田オリザの演劇理論をきちんと踏襲した佳作である。
80分。31日まで。