半沢直樹がものすごい視聴率である。
毎週3割以上の人たちがライブでテレビを見ている。
金融機関を舞台にしたドラマがあれだけ人気を取るなんて誰が思ったのだろうか?
TBSの福澤ディレクターの強い思いが結実したのだろう。
ある個人の強い思いが実現すると、
その思いは実は多くの人に深く刺さっていく。
その顕著な例がスティーブ・ジョブス率いたアップルである。
本作でも同じようなことを感じた、
作・演出の誌森ろばの熱くて強い思いが結実した素晴らしい舞台だった。
瞬きするのも惜しいくらいスリリングな展開が続く。
そして経済は経営は人を豊かにし救おうとするものだということがよくわかる。
広告のコピーで
「人を救うのは、人しかいない」
というものがあったが、まさにそのことが経済界でも起きている。
そのことを絶望しかかった私たちにこの舞台は教えてくれ、
勇気を与えてくれる。
かすかな希望をもって最善を尽くし続ける。
その人間たちの姿は美しい。
それが経済や金融の世界であっても医療の現場であっても同じなのだ!
誌森は本公演を行うにあたってこんな文章を寄せている。
かつてわたしはとびきりの経済音痴でした。
それが金融を舞台にした演劇を書きたいと思うようになるのだから変われば変わるものです。
そう考えるまでには長い紆余曲折があり、
いまもエキスパートにはほど遠いけれど、
現在の私が「経済を考えることは人間を考えることだ」と
確信していることはたしかです。
こうした誌森だからこそ、難しい経済用語の意味を観客にわかりやすく
とどけるための工夫をしている。
演劇的な手法を使ってユーモラスに
かつシリアスにこの舞台が進行していく。
お話は、日本で初めての日本の
バイアウト・ファンド
(投資先の企業の業績を上げることによってその利鞘を売ることによって利益を得るファンド)
会社を設立する若きコンサル会社の二人。
そこにベテランで金融界のカリスマとも言われている外資系投資ファンド会社のエリートを
ヘッドハンティングにかかるところからこの舞台は始まる。
海外のMBA取得中にインターンで10週間だけやってくる男。
彼のコンサル会社の同期だった男もここで働いている。
そしてカリスマ投資家は日本の銀行の財務担当者だった男を連れてくる。
まるで七人の侍のように、ここに集まった6人のスーツを着た男たちが
企業の再生を目指す。
再生を目指す企業の第一号は「カイト」という会社である。
街工場などで使われている
天井から吊り下げられているクレーンを作っている会社。
そこの海外のマネージメントがうまくいってなく、
さらに新規で立ち上げた貸倉庫&物流サービスの部門がうまくいっていない。
そのため利益額がとても少ない、という
現状を打破するため、カイトの社長(二代目社長)はこのファンド会社に相談を持ち掛けた。
TOBで株を買い戻し、非上場化して、企業の再生を図る。
ある危機に直面している会社をどのようにして再生していくのか?
という具体的な事例が満載で、会社員の僕としては
まったく人ごとに思えなかった。
そして、彼らの勇気と覚悟を見て、僕たちもこうして頑張れるかもしれないという
希望を与えてくれた。
この舞台はすべての社会人と社会人経験者に見てほしい。
人と人が信頼でつながっていくことが
どれだけ美しいいかということを再認識させてくれる。
そして、そもそも経済は「信用」で成り立っているのだという
基本についてを教えてくれる。
9月18日まで!オススメです。