いよいよ11月1日公開!
先日、発表されたエミー賞で作品賞・監督賞を初めとした11部門で受賞。
ラスベガスのショウビジネスは世界一じゃないだろうか?
人工的な都市でおとぎ話のような世界が日々繰り広げられる。
リベラーチェはそのラスベガスのショウビジネス界の第一線を走り続けた。
ピアニストとして歌手として絢爛豪華な衣装と素晴らしいピアノ演奏で観客を魅了し続けた。
1970年代から1980年代にかけてのことである。
この映画は、彼の晩年である1977年から1987年までを描いたもの。
監督はスティーブン・ソダーバーグ。
技術力の高い演出で
フィルム1コマさへも退屈な場面は作らないという覚悟みたいなものが見えた。
それは今回の映画では圧倒的なリアリズムという
言葉で置き換えられるのかもしれない。
以前、溝口健二監督のことを圧倒的なリアリストと称した
批評家の文章を読んだことがある。
忠臣蔵の松の廊下は幅が七間あったとして
12メートル近い幅の廊下を実際に撮影所の中に作ったと言われている。
そのこだわりは人物造形にも拡がっていく。
本作もまさにそのようなリアリズムに満ち満ちている。
映画芸術は虚構であると知りながらも
迫力を持ってその虚構が描かれる。
そのリアリズムをもった虚構性がラスベガスでのショウビジネスの
につながる。
さらにはホモセクシュアルな世界の持つ虚構性をもあぶりだす。
人間はそうした幻想を抱えながら生きていくものなのかも知れない。
そのあこがれのイメージからお互いに魅かれあい愛し合い、
そしてついには破綻し別れる。
しかしながら出会った
二人の中には大きな人間愛のようなものが生まれてくるのだ。
それをストレートに描いているという意味では
この映画はとてもヒューマンな映画と言えよう。
この映画は、リベラーチェが生前隠し通していたゲイの世界を
リアリスティックに描いている。
その肉体を通じた身体感覚の描き方が尋常ではない。
自らがその場所に身を置いているかのような気持になる映画と言ったらいいのだろうか?
マイケル・ダグラス演じるリベラーチェに
マット・デイモン演じるスコットが見初められ、
最初戸惑っていたスコットがリベラーチェを受け入れ、そして魅かれあい
さらに深い関係になっていく。
食べること飲むことセックスすることそして自らが稼いだお金で買い物をし散財すること。
リベラーチェはそうした欲望に忠実である。
エンターテイメントビジネスのプロとして第一線で働きながらも、
スコットのような愛人?をいつもそばに置いてバランスを取る必要があったのだろう。
リベラーチェは敬虔なカソリック信者であるというセリフが登場する。
あの時代は米国でもまだまだLGBT(レズ・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)
について公に語られることのなかった時代だろう。
その秘密の花園をソダーバーグ監督はそのままを再現するように描きだす。
二人が親密になるにしたがってお互いの葛藤や嫉妬が生まれて来る。
スコットは愛人?の生活との歪んだものの
バランスを取るためにドラッグに溺れ始める。
こうした人のこんな人生があったんだよ!とカメラは禁断のプライベートな
世界へどんどんと入り込んでいきながらその奥にある人間愛にフォーカスしようとする。
そんな映画です。
マイケル・ダグラスのピアノ演奏が素晴らしい。
そしてマイケルとマットが自らの身体を酷使して太ったり痩せたりの
すさまじい努力がきちんとフィルムに収められている。
そして、特殊メイクの技術もすごい。
この映画をアンチエイジングや老いるということについての
映画と見る人もいるのでは?
1987年リベラーチェはエイズが発症しその生涯を終える。