JR桜木町駅から山側に降り立ち、
日の出町の方へ数分歩くと「横浜にぎわい座」がある。
しっかりとした造りの鉄筋コンクリートの建物が、
昭和のニオイが残る野毛の街中にスックと建っている。
にぎわい座の右側には「動物園通り」という小さな通りがある。
野毛山動物園に行くための近道なのだろうか?
周辺の商店は本当に、昭和の気分を残していて面白い。
ちゃんと探せば隠れた名店に出会うかもしれない。
風間杜夫が落語の公演をしているというのは知っていた。
上手いのかどうだかは知らないが定期的に、
花禄さんなどとやっているのはチラシなどを見て知っていた。
落語好きのKさん夫婦に誘われて
ゴールデンウイークの余興のひとつになった。
にぎわい座も桟敷のある寄席小屋とまったく同じ作り。
天井が、末広亭などと比べて高い。しかも二階席もある。
Kさんは、柳屋喬太郎がシュールな新作をやり面白いという。
本当だった。喬太郎の話し振りには枕から澱みがなく、
すらすらと寄席小屋の観客の状況も推し量りつつ語っていく。
客席で携帯電話が鳴った時などは、
携帯が鳴っていることを枕の噺の中にとっさに取り込んで客席との一体感を強くする。
横浜で学生の男が女をデートに誘うという新作噺。
恋愛モノなので聞いていて顔がにやけてくる。
決して、端正な顔立ちではない喬太郎がそれをやるのでさらに面白い。
何度か突拍子もないお笑いが挟まれつつお話は進行していく。
その姿と芸が素晴らしかった。
落語に惹き込まれるときっていうのは、自分の感覚器官が、
舞台上で明るく照らされた演者をただ単に見ているだけで、
実は頭の中の想像したシーンだけで構成されているときだ。
ものすごい集中力をもって落語を感じているのだろう。
風間杜夫の古典「元犬」を見て中入り。
東京ボーイズの音楽演芸を生で聴き、
彼らのキャリアからくる枯れた芸の凄さと、
時代から半周くらいズレている感覚が同居しており、
大変興味深いものだった。
トリで風間杜夫が演ったのは、劇作家、鈴木聡さんの新作落語
「よいしょの階段」だった。
新作落語といっても江戸時代の話。場所は吉原。
吉原の「太鼓持ち」の噺だった。古典と遜色のない噺運びだった。
風間杜夫は聞いていてハラハラドキドキする感じが、
彼の持ち味なのではないだろうか?


お囃子は、あの「蒲田行進曲」だった。