秋田発、国際教養大学の挑戦と銘打った本書の著者は、
まさにその国際教養大学の理事長であり学長である中嶋嶺雄本人。
1936年生まれで東京外大から学生運動を経て、
東京大学大学院に入り、その後、東京外大の教授から学長を経て、
秋田県の新設公立大学の学長になられたそうである。
国際教養大学の設立は2004年。今年でちょうど10周年を迎える。
初年度から新たな採用形態をとっていたのでとても人気の大学となり、
その独自性が評価され大手企業から求人の問い合わせも多く、
卒業生はひっぱりだことなり、様々な分野で活躍しているらしい。
10年も経つと一期性が管理職などになり、
これからますます国際教養大学の評判は変化していくことだろう。
企業が学校を設立して特徴を出す、というのは割と多いのだが、
こうした秋田県が公立大学として設立するというのはとても珍しいのでは?
県税を使って若い人を全世界から集めて来て教育する。
授業の写真を見ると1クラス10数人くらいだろうか?
こじんまりとした教室でゼミ形式での授業を行っているのだろう。
これは決して効率が良くない。
ただし、生徒の立場からすると質の高い教育が
きめ細やかに行われているはず。
本学の特徴は英語を基本言語とし、全世界からの学生が集まり、
そこで様々な教養教育が行われている。
入学するのも難しいようだが、入ってからきちんと卒業するのがもっと大変。
全寮制で外国の人と同室で暮らし勉強しながらやっていくことで
様々な葛藤が生まれるだろう。
生徒はそれを乗り越える。
また、この大学では1年間の海外留学が義務付けられている。
提携先の大学は全世界に拡がっており
ペルーやモンゴルなどの大学などもある。
生徒は自らその学校を選び自主独立で1年間を過ごしていく。
海外経験をすることでいやおうなく日本という国を意識し
日本人としての自分を強く意識するようになるだろう。
その相対化が20代の前半で経験できるというプログラムはとても貴重。
もう一つは教養教育に重点を置いているというところだろう。
リベラルアーツ=教養学部のある大学は今や、東京大学とICUくらいじゃないだろうか?
映像テクノアカデミアではその対極とも言える実学を教えている。
が、高等教育機関でこうした教養を学ぶことで
多くの基本がわかり創造的なチカラが就くだろうことは想像できる。
自分に置き換えてみると、若いころ
そうした教養というものを毛嫌いしていたというところがある。
とっつきにくい、固い、難しい。
でも、この年になって古典の名作などをきちんと理解していくと、
それはそれは魅力的で面白く、その表現や解釈の仕方は多様であり
様々なバリエーションを生み出すことができる。
そのために学ぶことを積極的に推進するのは本当の意味で重要なこと。
海外の大学では4年間教養を学び、その後、大学院で
専門的な学問に移行していくのが一般的らしい。
高等教育とはそういうものであるのだろう。
日本のマンモス大学はその根本的な魅力を再度作って
より魅力的な教育機関となっていかなければならないだろう。
少子化が進んでいまや日本の私大の4割は赤字経営だという。
学校法人という税金が免除されている制度にしてもそうなのだから、
これからの高等教育機関の新たな再編が確実に始まるだろう。
その先鞭を10年前につけ始めたのが、この秋田国際教養大学である。
24時間運営している図書館がこの地にあるという
素晴らしい環境がこれからも続いて欲しいし、
ほかの高等教育機関もそれに続いて独自の道を切り拓いていって欲しい!