副題は「コミュニティデザインから考える」というもの。
NHKの番組で「東北発☆未来塾」というのがあるのを知っているだろうか?
割と遅い時間に毎月講師が変わって
4回連続で東北を様々な方法で元気にしようというもの。
東北出身で東北でTVの取材中に3・11の震災を経験した
「サンドイッチマン」の二人がMCを務めている。
その番組が始まった冒頭のキックオフの番組に
本書の山崎亮さん(sutudio-L代表 コミュニティデザイナー)の月があったらしい。
番組が始まったのは2012年3月11日!
そして本書の発行は2012年の5月。
前に読んだ「コミュニティデザインの時代」(@中公新書)が
山崎さんの行っているコミュニティデザインという考え方や
活動の総論・概論であり。
本書は具体的に実際にどのようにワークショップなどが行われているのか?
を具体的に記述されたもの。
実際に東北で被害が起きた地区のコミュニティをどうすればいいのか?
ということについて複数のチームを組み問題解決の議論をしまとめ発表している。
これは、以前僕自身が参加した
ドリームデザインで行われたワークショップとも似ており、
ソーシャルな課題解決のためには、こうした話し合いを持つ
と言うことがとても重要であるということがわかる。
そして、その中に必ずその地域の人たちがいて
その人たちと一緒になって地域の問題を考えていくということを
山崎さんもおやりになっている。
これはコンサルタントと大きな違いである。
コンサル業務はこうしたらどうですか?と提言をするだけで、
あとは現場の人たちに任せてしまう。
やろうが、やるまいが、それはあなたたちが考えて決めてくださいと。
でも、山崎さんはそれだけで地域のコミュニティが
本当に楽しく機能できるところまで変化・成長できるのだろうか?
という根本的な疑問をもっていらしたのだろう。
それゆえ手間がかかり非効率化もしれないが、
山崎さんと山崎さんのスタッフがその地域に張り付き
時間を共有しながら地域の人たちの変化を促し自分たちのこととして
課題を発見し解決しようと動き出すまでをフォローする。
山崎さんの考え方に賛同した人たちがスタッフとして集まり、
高い報酬ではない幸福感や達成感をその仕事を通じて得ている
ことがとても良く伝わってきた。
地域の住民が若い山崎さんのところのスタッフに
ほかに行くところがなければここにきて働けばいい!
食べていくことはできる!
と話してくれたというエピソードが心に残った。
さらに、このワークショップで重要なのは
ファシリテーションをどのようにしていくのか?ということ。
その場の状況に応じた形で議論を誘導していく技術が問われてくる。
山崎さんはこの活動を通して議論を進めていける若いファシリテーターを
育てたいと思っているようで、そうした人たちが育っていけば、
より多くの地域のコミュニティデザインを創ることが出来るようになるだろう。
本書はそのための実践的な書である。
NHK取材班の視点も入ってきており
ある客観的な視点によってよりわかりやすく語られている。