副題は「なぜ無印良品は蘇ったのか」という
あまりひねりのないストレートなもの。
2006年12月発行なので、無印の松井改革の端緒の部分で本書が書かれたのだろう。
その試みは店舗運営、商品開発、海外展開などあらゆるところで実行され、
成果が上がっている。
価格競争に巻きこまれない、と同時にバブルなものに寄り添わない
シンプルで素材を生かしたものを創りつづけるという独自のコンセプトを維持しつつ
孤高の戦略を現場レベルまで浸透させていったことが
現在の無印良品の成功を作っていった。
本書にはその改革のヒントとなることがさらああっと書かれており、
短時間でこの企業の改革の方法を学ぶのにはいいかもしれない。
しかし、読み物としてはいささかものたりないというのも事実。
商業界的な商品やサービスの紹介にまでしか届いていないのでは?
創業経営者ではない経営者が強烈なコンセプトをもったブランドを
今後どのようにしていくのか?
というヒントみたいなものを僕自身が
行間に求めていたのは確かである。
盛田さんや大賀さんが亡きあとのSONY、
また、スティーブ・ジョブス亡き後のアップルなど
同じような問題に直面していることだろう。
SONYの例で言えば、インドでのSONY戦略が面白い。
液晶テレビの画質のデフォルトをインド人仕様にして売る。
インド人は鮮やかな色を好み、げげげ!ここまでカラフルな!
みたいなものが好みらしい。そして音量は常に大音量。
さらにインドではSONYチャンネルという放送局がとても人気があり、
その人気コンテンツをSONYのスマホでしか見ることが出来ないという戦略で
SONY製スマホをインドでは爆発的に売っているという情報番組を観た。
こうした、いままでなかったような戦略で改めてワクワクドキドキする
仕組みを作り上げるのがソニーイズムであり、
こうした方法や戦略はすべてのブランドにも通じる。
無印良品はそもそものコンセプト自体がしっかりしているものなので、
松井改革では、その中でのワークフローを見直し、最適化していった。
在庫の量の調整なども見直し、ITをきちんと使って、
どのようにすればよりよくなるのかをひとつづつコツコツと積み上げた結果が
本書の中に書かれている。
素敵な理念・哲学に共感するものたちが集まり、
そのやり方を細かく分析して最適化すること。
めんどくさくて手間のかかることを無印良品はやり続けて
現在の状態に至ったのだろう。
1983年のアメリカ村の無印を見たときのワクワクはいまも店舗の中に残っている。
それは素材を前にして創造性を思いっきり開こうとしているようなワクワク感とでもいうのだろうか?
人に寄り添った
そういうものを大切にするブランドなんだろう!