作:別役実、潤色・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ。
青山円形劇場がいよいよ閉館となる。
子供の城とともに再開発されるらしい。
円形劇場の開館は1985年のことだった。
僕が東京に出て来て働き始めたのが1985年だから、
僕の東京での生活とともに育ってきたような劇場という印象がある。
1987年から行われた「青山演劇フェスティバル」は
東京で演劇を見始めた観劇初心者だった僕に
とてもいい演劇体験を与えてくれた。
「青い鳥」「遊◎機械全自動シアター」などの小劇団の公演と言えば
「青山円形劇場」というイメージが出来上がった。
1987年にKERAさんが「第一回 青山演劇フェスティバル」で
別役実の「病気」を演出したらしい。
その後、KERAさんは何度か別役実作品をこの劇場で上演しており、
僕が最初に見た別役実の作品もこの劇場だったように記憶している。
超シュールな舞台、これを「不条理劇」と呼ぶのだと知ったのは、
僕が30代になってからだった。
そこから遡るように「サミュエル・ベケット」っていう
変なおっさんが不条理劇をはじめたことを知り、
「ゴドーを待ちながら」を見たのはようやく
30代の後半になってからだった。
青山演劇フェスティバルでは意欲的なプログラムが毎年組まれ
2001年までの15年間続いた。
後半になると、いくつもの公共劇場などが登場し、
演劇フェスティバル的な催しが
いろんなところで行われるようになった。
そうして
当初の小劇場演劇の最前線を紹介するという
目的は少しづつなくなっていったのかも知れない。
そういえば、「広告批評」で80年代後半に小劇場演劇の
特集などが組まれており広告関係者で
そうした記事を見て演劇を見始めた人も多かったのではないだろうか?
その青山円形劇場のファイナルの企画として
別役実さんの新作「雨の降る日は天気が悪い」を
上演しようということで豪華キャストが決まったのだが、
別役さんの病気療養のために演目を変更せざるをえない状況になったらしい。
そこからKERAさんは、どうしようか?と思いながらも
別役作品を片っ端からあたり始め、ついにこの「夕空はれて」ならば
上演できるのでは?と考え、新たにセリフのない二人のキャストを追加して
上演に至ることになったそうである。
15分間の休憩を入れて90分という上演時間。
実質75分。
円形劇場らしい構造を使った演出。
花道が4本あり円形舞台に通じる。
そこにつるされた4本の電燈のついた電柱がある。
この電柱は別役作品にはなくてはならないもの。
二村周作の美術でこのようなアイデアになったことに感心。
円形舞台はシンプルな白い円形。そこに椅子が7脚置かれている。
そこを通りかかる旅人(仲村トオル)、
地元の人たちの不条理極まりない話に翻弄される仲村トオル。
その不条理なバカバカしさをひっぱっていくのが
KERAの盟友でもあり今や怪優と呼んでもいい犬山イヌコ。
犬山の相棒役として山崎一。
そこに緒川たまきとその妹の奥菜恵がやってくる。
マギーが登場し、最後には池谷のぶえが爆発的なキャラで登場する。
この奇妙な人たちが仲村トオルに向かって、むちゃむちゃなことを言う。
それを受けてうろたえる仲村トオル。
そのうろたえっぷりを見るだけでもこの小品を見る価値はあるだろう。
豪華なキャストを間近で見られる。
しかも、円形なのでどんなお客さんが来てるのか?もよくわかる
とても貴重な舞台。
もうここで見られなくなる。
いまが、ラストチャンス。14日まで。