新国立の二人芝居シリーズの三回目で最終回。当日券にて。B席ゲット。
2000円の違いは大きい。Z席は売り切れ。(ちなみにZ席は1500円)
俳優は、浦井健治と鈴木杏の二人。
劇作家はイギリスのニック・ペイン。現代は「Constellations」(星座とか群とかいう意味)。
小川絵梨子演出。上演時間85分。
養蜂家の男性、浦井と、大学で物理学を研究している女性学者、
鈴木杏ちゃんが出会い、別れ、再び出会いということを、
シーンシーンの断片で見せていく。
そして、もし、あのときこうしていたら的なシチュエーションが繰り返し描かれ、
本当に選択肢とその組み合わせは星の数になる。そんな舞台。
実験的ではあるが、自分に置き換えてみても
あのとき、別の選択肢を選んでいたら今の人生は
まったく別のものになっていたのではないか?と思う。
そんなことを思い出させてくれる舞台。
この二人には出会ったときに彼女がいたり、
彼女と別れたばっかりだったり、そして彼に興味をもったり、
まったく上の空で研究のことについて考えていたり、
といくつもの設定が同じシーンで繰り返される。
繰り返す時に効果音が入り、俳優が同じセリフを繰り返す。
そして、今度はどのような展開になるだろう?と想像する。
シーンが10個あって、その対応が10通りあったとしたら
10の10乗の数の組合せが考えられるということを実感する。
ということは、僕たちがいまこの状態にあるということは
ある種の奇跡に違いないと思うのだ。
一期一会でかけがえのない瞬間が見えてくる。
そのかけがえのない瞬間のいくつもの局面を
私たちはこの舞台を通じて疑似体験するのだ。
「ああしとけばよかった」ということはないのだ!
ということがよくわかる。
あのとき、ああしたので今の自分がある。
結果が良くても悪くてもそれは本当にいいことで悪いことなのか?
は結局わからない。
ひとつの事象が起きたことを受け入れて
私たちは生きて行かなければならないのだから。
というニックさんの哲学的なメッセージが聞こえてくるようだった。
出会いから同棲をする二人、そして別れ、再会、一緒に暮らし、
そして鈴木杏ちゃんに病気が見つかる。そして・・・。と
男女二人の話なので色っぽいシーンもあり、
あの「駅長さん」とドラマの名作「青い鳥」で少女を演じていた
杏ちゃんが大人の女を演じる。
下着姿になって舞台上で着替えるシーンがあり濃厚なキスシーンがある。
それを堂々と演じる演技派の二人を見るだけでも価値があるのでは。
舞台美術が面白い。(美術:松岡泉)丘が真ん中にあり真ん中に1本の木が、
そして左右の手前に二人が暮らす部屋がある。
実験的で冒険的な演出、
タイムワープを繰り返すような舞台なのだが
SF的な感じは微塵もなくなぜか人生の長いスパンの
いくつかのシーンをしみじみと見せてくれる。
21日まで。