作者の菊田まりこさんは武蔵野美術短期大学卒のグラフィックデザイナー。
「朝日新聞の土曜日のBeの別冊」で感動する絵本みたいな特集で
ある書店員さんが推薦されていた。
新聞にはこうしたものをひょいと紹介してくれる価値がある。
普段の生活をしていたら決して出会わないようなものに
出会う可能性を拡げてくれる。
アマゾンなどの推薦機能にはそれがない。
そのために書店に行って偶然の出会いを探し求めるのは
大切な行為だと思うのだがみなさんはいかがですか?
しかし、もし、アマゾンなどのプラットフォームが
そうした偶有性みたいなものを再現できるアルゴリズムみたいなものを作ったら、
新たな可能性が開かれるのか?とちょっとだけ想像した。
どうなんんだろう?
電通の岸さんが
以前、トークイベントで「セレンディピティ」という言葉を使ってらしたが、
まさにそんな感じ。
そして本書との出会いはまさに「セレンディピティ」だったのかもしれない。
本書自体は5分で読めてしまう。
簡単に言うと、シロという犬と女の子のミキちゃんとの
愛情あふれる交流が描かれる。
しかしある日ミキちゃんは死んでしまう。
シロはミキちゃんに会いたいけど会えなくて寂しい。
でもシロはミキちゃんに会うことが出来た。
想像の翼の中に身を任せるとミキちゃんとの思い出が蘇る。
実際の犬がこんなことを感じているのかどうかわからないが
人間は飼い犬にたいしてそんな気持ちを持っているのではないか?と思うのだ。
それを本書では飼い主だったミキちゃんの喪失という逆転現象で描き出す。
それが、とても興味深いものになったのでは?と推測する。
絵はとてもかわいく、
菊田さんが、何かのメッセージを発信しようとして
描いたものではないというとはわかる。
しかし、本書にはそれを超えた何か大きな普遍的なものが
その根本に横たわっている。
だから短い掌編でもしみじみと深く私の心の中に入ってきたのだろう。