アメリカ合衆国とはいったいどんな国なのか?
その根っこのところを判りやすく解き明かしてくれたのが本書。
内田はアレクシス・トクヴィルの170年前の著作
「アメリカにおけるデモクラシーについて」をアメリカ論のベースに置いた。
アメリカに長くいた人やアメリカ人が身近にいるひとには、
なるほどと納得させられることが多々あるだろう。
内田は歴史的背景をベースに紐解きながらアメリカ合衆国を語っていく。
時々、西部劇で有名な、ワイアットアープと発明王のトーマスエジソンは
実は同じ時代に生きていたのだなどというエピソードを教訓的に挿入する。
またここでは内田は「マイナスの想像力」という言葉を使う。
彼の著書「知に働けば蔵が立つ」で「強い想像力」と語ったように。
(以下、引用)
「マイナスの想像力」とは「すでに起きたこと」を
「まだ、起きてないこと」として「かっこに入れる」想像力の使い方です。
現在から過去に向かって遡行しながら、そのつど「分岐店」をチェックして、
「どうしてこの出来事は起きなかったのだろう?」というふうに考えて見ることです。
このような想像力は言い換えると、その時代に
未来はどうなるかなどと考えずただいる自分を想像し、
起きた出来事と起きなかった出来事を想像してみる力といえるのか?
これは、面白い視点だなと思った。
このような目を見開かされるような考え方が次々と披露されるのが
内田樹の著作物の面白いところでもある。
ここではさらにファーストフードをベースにした食と民族主義の話。
(対立項として、イタリアピエモンテ州で起きたスローフード運動が取り上げられる。)
アメリカンコミックのヒーローの系譜をベースにした、
日本人とのヒーロー観の違いについて。
アメリカのデモクラシーは独善的であるという話。
(やはりアメリカは正義の衣をまとったジャイアンであるというのがここから読み取れる。)
児童虐待、シリアルキラー、身体と性、キリスト教、社会資本、裁判などのトピックが続く。
日本もアメリカ化が進んでいるのだなあと改めて思う。
このことは、果たして如何なものだろうかということに思いを馳せる。
日本は、日本独自の日本化であり、アジア化に向かって進むのが、
自然な流れになるのではないのでしょうか?
元キャノンの社長だった御手洗さんが経団連の会長に就任された。
御手洗さんの行なってきた、
日本式経営はそのひとつの指針なのではないだろうか?