1970年代前半に上演されたあの伝説のつかこうへいの舞台が
この紀伊国屋ホールに戻って来た。
今回「つかこうへいTRIPLE IMPACT」ということで本公演からはじまって、
つか作品が3作連続上演される。
企画・製作はアール・ユー・ピー、制作はつかこうへい事務所。
本作品は、何度も上演されておりヒロインを演じた俳優がたくさんいる。
広末涼子や桐谷美玲なども演じたのではなかったか?
そして、つかファンというのはいまも確実に存在しており、
そのファンの方たちと今回の若き俳優たちを見に来た人で
紀伊国屋ホールは埋まっていた。
70年代のあの熱気をまたこの新宿の場所に持って来た。
その熱意が伝わってくる舞台だった。
元々初演は、早稲田大学で上演され、青山のVAN99ホールでの公演は伝説となり、
その後紀伊国屋ホールに進出。
当時の演劇すごろくのあがりを瞬く間に実現した。
実は、僕が演劇を見るようになったのも
大学1年生のとき大阪の「オレンジルーム」という劇場で
つかこうへいの「熱海殺人事件」劇団☆新感線版を見たことから始まった。
熱く劇的なセリフだけで
観客を笑わせ、感動させ陶酔の世界に連れていく。
つかこうへいはなぜこうしたセリフが書けたのか?
やはりある天才のなせる業だと思わずにはいられない。
その後、つかこうへいは優れた舞台を量産していった。
あの当時にありがちな無頼派で激しい男は
時代の寵児になっていく。
朝日ジャーナルなどで彼の記事を読み、
多くの若者たちが彼の舞台を見に行く。
それまでの舞台の構造とはまったく違ったものがそこにあったのだろう!
新劇ともアングラ演劇とも違う新しいものがそこにあった。
ファッションなどの若者の風俗がそこに取り上げられている。
また、
本作は、当時社会問題にもなっていた、
安保闘争の学生運動を題材に取り上げている。
東大闘争などで亡くなったかんば美智子さんの事故などの事実から
つかさんはこの舞台をお書きになったのだろう。
つかこうへいは原稿用紙に戯曲のセリフを書かなかったという。
口立てでセリフを紡ぎ、つかさんのアシスタントが
それを筆写していくという形式をとっていたらしい。
俳優はそのつかさんの口立てを聴いてそのまま演技をする。
口立てだけに舞台でのセリフを聴いていて
とても気持ち良く劇的で刺激的なセリフが
あるリズム感を持って伝わってくるのだ。
この日もつかこうへいの優れたセリフが
マシンガンのように観客席に向かって乱射された。
撃たれた私たちは放心状態のようになって
そのセリフの渦に身を委ねるのだった。
本作は小川智之の前説から始まる。
学生運動を知らない方にもわかるようにホワイトボードで
その時の用語などを解説する。
「日米安全保障条約」から始まって、
「アジト」や「オルグる」まで。
そうしてほぼ3人だけの舞台が2時間10分続く!
舞台セットは何もなく俳優と音楽照明だけで直球勝負。
つかの芝居はそれを可能にする。
圧倒的なセリフの素晴らしさ。
大谷英子と神尾祐のロマンスが美しい。
そして吉田智則のまさにつかこうへいらしいセリフ回しと演技。
2月15日まで。このTRIPLE IMPACTは3月2日まで続く。