これにつけられた副題は「妻と夫と虎の夢」。
カフカ的な不条理な世界が拡がる。
これを見るきっかけになったのは観劇仲間であるTさんのメール。
すごく面白かったと。急いでスケジュールを確認して予約する。
当日受付精算で予約できるシステムはありがたい。
本作はこの副題が語っている。ある夫婦のお話。
登場人物は13人。
ある劇場に住み込みで管理人をやっている夫婦のエピソードを軸に話が展開する。
「はえぎわ」らしいエチュード的な短いエピソードが断片的に
積み重ねられていき物語を作っていく。
妻はある日、突然家を出て友人のキャビンアテンダントをしている女性のところに行く。
夫は妻が帰ってこないので彼女を探しに行く。
並行していくつかのエピソードが描かれる。
夫=ゴードンの友人との会話。
そして、動物園で虎を飼育していた飼育係の大きいのと小さいの。
彼らがひょんなことから虎を園外に逃がしてしまう。
ピザ配達の青年。住所がわからず懸命に探して配達しようとするのだが、
店長から変更などの連絡があり困難を乗り越え懸命に仕事をする。
このピザ配達の男は実はゴードンの腹違いの弟だった!
顔の濃いカップルの話。とても奇妙なカップルである。
タニノクロウの舞台にも出てきそうな。
この二人は結婚を約束している。
彼女はその前に目を二重に整形する手術を受ける。
ゴードンの元彼女が現れる。ゴードンのことが好きな彼女は、
ゴードンが他の女性(ドーソン)を好きになったことを知って、暴言を吐く!
愛のある暴言がココロをうつ。
さらに劇場のオーナーと元オーナー、その劇場で公演をやりたいとやってくる
無言劇と無音劇の男女ユニット。
さらにはおかまバーを経営しているおかまさんなど。
こうした登場人物が次々と登場しながら何とか破綻することなく演劇が続いていく。
こうした手法が出来るのもまさに演劇ならではと言えるだろう。
各エチュードが笑える。
笑いは人によってそのツボが違うんだということがよくわかる公演でもある。
本当にどの場所で誰が受けるのかがモグラたたきのように予想がつかない。
観客席のある個所で笑いが起きるのだが他の場所はシーンとしている。
その奇妙な感じが本作を象徴している。
そんな舞台が楽しめる方はぜひ劇場に足を運ぶといい。
劇場で劇場の管理人の話を見るなんてなかなかない。
不条理で破綻しかかっているところも多分にあるのだが、
それを上回るだけの爆笑個所と生きることに対してのポジティブな愛情がある。
生の喜びに満ちた変な舞台である。
ゴードンが歌いながらタップダンスをするシーンも魅力的だった。
エンディングはまさにキリストの最後の晩餐を象徴するシーン。人数も13人。
キリストと12人の弟子と同じである。
いつも劇中の音楽のセンスがいい!11月1日まで。