作・演出:伊藤毅。
青年団は俳優と演出家の層が厚いので新たな才能が出てくる可能性も高くなる。
と言ってもひょっと1本舞台を作ったからって観客が
好感を持って受け入れてくれるというものではない。
何度ものトライアンドエラーを繰り返して、劇作や演出がうまくなる。俳優も同様。
そして、そこからは作家の個性の勝負となる。
いろんな演劇を上演する人たちがいた方がいいし、
多様な表現を見られるのは嬉しい。
そして、青年団は劇団員にそうしたトライができるチャンスを与えている。
その中の一番初めのエントリーとも言えるのが、
この若手自主企画と言えるのではないだろうか?
俳優たちを集めて稽古をして、劇場で上演することができる。
そして本作でそうした自主企画が66本目になるのだ、ということ。
太田宏などのベテラン俳優が登場しているので舞台がぴしっと締まる効果がある。
年齢や経験の幅の広い俳優やスタッフがいてくれることが、
若手の技量を高めることにつながる。
これって、会社と似ている。
会社組織も経験豊富なベテランと新人を組み合わせてプロジェクトにあたることが増えているらしい。
50代のベテランと20代の新人である。
そうした組み合わせで物事に対処するとお互いに学ぶことができ
さらなる高みに向かえる。
青年団もそうして新たなる才能を育てているのだろう。
舞台は茨城県のある地方都市M。
大きな病院のある場所で、盲目の女性や看護士などが登場する。
この町でずーっと暮らしている人と、福島から移住してきた人
東京から戻ってきた人など、様々な人たちが交錯する。
そして様々な男女の恋愛模様が描かれる。
植木屋さんで働く男女、太田宏の弟とその妻(小瀧万梨子)。妻は妊娠している。
いくつものエピソードが並行して描かれるのだが、
そのエピソードがどこかで交わるのか?と思ったら何も語られないこともあるし、
あるエピソードだけが唐突に現れることもある。
セリフを通じてその関係性がわかるのかな?と懸命に向き合うのだが・・・。
そうして、ポーンと唐突に放り出すようなコミュニケーションの仕方が
伊藤さんの持ち味なのだろうか?
アフタートークで「青年団リンク キュイ」主宰の綾門優季さんと伊藤さんが話しているのを聞いて、
いつも伊藤さんの舞台には障がい者の方が登場するとのこと。
それは、どうしてなのだろう?伊藤さんもそのことを肯定していたので、
そこには何らかの意味があるのかもしれない。
小瀧万梨子がよかった。19日まで。初日観劇。満席。