作・演出:ロラン・コロン。
城崎温泉がある兵庫県豊岡市は町おこしの一環だろうか?
アーティスト・イン・レジデンスの活動を行っている。
具体的な詳細は平田オリザの著作「下り坂をそろそろと下る」(@講談社現代新書)
などをお読みになるといいだろう。
そして、本作はまさにその取り組みの一環として
フランス人演出家と青年団と無隣館の俳優たちが
城崎温泉に滞在して作り上げたものである。
公演タイトルにもあるように本作は
「城崎温泉+オノマトペ」というテーマで作り上げた。
ロランが城崎温泉に滞在して感じたことを
俳優たちと一緒に奇妙な白日夢にしていった。
折り込みでロランが書いている部分を引用する。
「温泉を訪れた一人の客が、シャンプーの容器と会話をしながら、
声の治癒力と変換力に目覚める物語…。温泉には猿がいて、
その息子はマッサージ師をしています。
老いた猿はずっと息子に話しかけられずにいます。
そして温泉を守っているのはタコと辺りを飛び回る虫です。」
見ればわかるが、実際にこうした登場人物が出てくる荒唐無稽の物語なのである。
しかも「オノマトペ」と銘打っているので明確なセリフが語られるわけではなく、
擬音語や擬態語などの俳優の身体から発声される音が交錯し
さらに奇妙な世界は加速していく。6人の俳優とともに、演出のロランも時々劇中に登場する。
あまりにも自由な演出と構成に観客は驚くかもしれない。
しかし、そのあまりにもすっとんきょうな舞台を見て、
観客は笑い出す。
子供が大人の変な動きや音を聞いて笑い出すように。
人間にはもともとそうした原初的なものに反応する感覚があるのだろう。
言葉が通じない人と突然出会ったときにどうしてコミュニケーションを取るのか?
どうしてわかりあえるのか?みたいな根源的な問題がここにあるのかもしれない。
フランス人と日本人が城崎温泉で感じ考えたことを
そのどちらの言葉でもないようなことで表現していく。
ある種のシュールレアリズム演劇は人間の生理に訴えかけてくるものになった。
そして、エンディングに近いシーンで現代口語演劇的なシーンが挿入される
その対比が印象に残る。
ロランさんは普段はパリ8大学にて音声学を教えているらしい。
個人的に最もインパクトの強かったキャラクターのタコを演じた
鈴木智香子(青年団)には本当に驚かされた。
上演時間60分弱。21日まで。