この舞台を見ている間中考えていたことがあった。
演じる役と、年齢の関係である。
今回の舞台は、1980年あたりの、大学1年生あたりを中心とした群像劇。
中心となるのは20歳前後の若者たちである。
しかし演ずるのは、近藤芳正を中心とする40代。
酒井敏也に至っては、髪の毛がキューピー人形と大差ないのだ。
役の年齢と、役者の実年齢とが違うことで独特の違和感が舞台に現出する。
もちろん、森光子は「放浪記」などで少女時代を演じる。
先日の新国立劇場での舞台「ガラスの動物園」も若き長兄役を、
50歳に近いだろう役者、木場勝己が演じていた。
このときも思ったのだが、回顧シーンになるとそのことが俄然力を持ってくる。
今回でも、その後の「砦」の面々がラスト近くで、語られる。
その時に初めてリアルな生身の人間として彼らは舞台に浮き上がってくる。
これまでのダンダンブエノ公演では、特徴的なこととして
劇中できちんと振付されたダンスが挿入されることだった。
井出茂太が振付をしているものの中にかなり面白いものがあった。
そして、役者たちは大変だろうなあと思った。
今回は、楽器演奏がそれにあたる。
お話の中心自体が、バンドを結成して、
地域のザ・ザンフラワー祭りで発表するというものなので
必然といえば必然と言える。
近藤芳正がSAXを吹き、坂井真紀がアコースティックギターを弾く。
坂井敏也がピアニカを吹き、宮地雅子が小さなリコーダーを器用に演奏する。
当時の音楽がふんだんに使用されている。
僕自身、一番音楽を聴いていた時代と重なるので
ほとんどの挿入曲はメロディーが口をついて出てくる。
「天国への階段」のイントロのギターソロが聴きたかった。
残念だったのは、山西惇が若くしていなくなるのだが、
そのことについて多くは語られず、関連づけられないまま、
生きていくことの大切さを語られる。
しかし、唐突すぎて僕たちには届かない。
また、若さゆえのゆらぎや葛藤、情熱を脚本は描こうとしてはいるのだろうが、
真実味をもって伝わってこない。
若いときのあのガラスの破片に触るような、シャープな感覚が欲しかった。
年齢の超えた役者でも、そのことが出来ると伝えて欲しかった。