作・演出:ハセガワアユム 俳優総勢22名!
満員御礼の札が貼ってある。平日の夜、しかも三鷹の駅から徒歩10分はある劇場である。
「MU」初見。上演時間2時間10分。
世は、ある狂犬病にかかった犬たちが発生し、狂犬病の犬たちが感染拡大し拡がり
多くの犬が人を襲うようになった。犬たちは人を噛み、嚙みちぎり、
最後には食べてしまう。それまでは、とてもかわいい愛玩のペットだった犬が
この狂犬病に感染するとそのような状態になるのだ。
という約束事が舞台を通して守られる。
その凄惨なことは舞台の外で起きており観客はその状況を想像しながら過ごさなくてはならない。
作・演出のハセガワアユムは観客の想像力を信じてこのお話を創り上げた。
4幕からなる舞台は、最初の約束事が通底しており、
シチュエーションや時間が変化する。
1幕はコンビニエンスストアである。そこの定員とお客さんとコンビニの裏にある、
廃屋のようなアパートの近くに居るかわいい犬のエピソード。
人間関係などがセリフを通じてあらわになっていく。
暗転後、二幕目は、会社の会議室?だろうか?新商品企画の会議と、
その企画に対しての各賞の発表が行われた後、会議室は扉に机やいすで
バリケードがなされており、外部の侵入を許さない感じ。
専務を筆頭とする、商品企画部の面々はそこで様々な事情を知ることになる。
密室ならではの本音が飛び出す場所。
そして、会社に侵入してきた狂犬たちを彼らはどのようにして守るのか?
専務の情事が暴露され、舞台は奇妙な空気が流れだす。
露悪的とも言っていい空気を流す究極の舞台を見たのは
王子小劇場での「ポツドール」の舞台「騎士(ないと)クラブ」だった。
作・演出は三浦大輔。
ちなみに、三浦は、先日、池袋の東京芸術劇場で「娼年」の演出を行った。
舞台での松坂桃李と高岡早紀の濡れ場が話題になった。
そして、三浦大輔は朝井リョウの原作「何者」の映画化で監督を務めたものが
もうすぐ公開される。
何を言いたいかというと、ハセガワアユムに三浦大輔が描き続けていた
露悪的なものを、いい意味で感じたからなのだが。
特に三幕の漫画家の先生の事務所の描写が素晴らしい。
怖さと奇妙さで息をのむ。今年、上演された映画「ヒメノアール」にも似た
奇妙な空気が劇場内を包む。何が正しくて何が間違っているのかわからない世界。
正義を振りかざしても、それは一方的な正義ではないか?
と思わせる劇構造になっている。三幕の俳優たちがはまり役でとてもいい!
漫画家のアシスタントなど、フツーの子なのに
何故か、あんなに怖いというのがいい。
そして最後の4幕目は動物保護センターでの、殺処分されそうになった
ペットたちの譲渡会の会場である。殺処分センターに隣接した
この場所でできるだけ多くのペットを守りたい。
ここでは犬を中心に語られる。
ここに様々な理由で集まる人たちの行動のレベルや考え方
感じ方のレベルがそれぞれなので大きな葛藤がここでも生まれていく。
そして、なんだかよくわからないまま唐突に劇は終わる。
全体に、俳優たちの演技が硬い。ので、間がスムーズに埋まらないで
固まってしまった間が舞台上に取り残されてしまう。
どのようにして、この22名の俳優を選んだのだろうか?
彼らが適切な演出で適切な演技で演じきることによって
劇作家の意図や感性は初めて見ている人に伝わっていくのでは?
三幕はそれが、成功していたのである。それゆえに???
後半に従ってよりよくなることを願います。
でも気になる作劇。10月10日まで。