2013年に駅前劇場で上演されたあの名作が再演された。
駅前劇場よりも数倍大きなシアタートラムでの公演と聞き、
あの濃密な舞台が蘇るのだろうか?と心配したが杞憂だった。
逆に、駅前劇場よりも大きな舞台となり俳優の配置や照明、音響に
より一層の工夫がなされさらなる高みに到達したのではないか?
濃厚な約2時間半の舞台だった。
大正天皇の生涯を中心として本作は語られる。
大正天皇は即位して10年が過ぎるころ病気を患い、
国事行為などの皇室の仕事が困難になっていった。
髄膜炎という脳にウイルスが感染して起こる病気だったらしい。
戦前の天皇は大日本帝国の「現人神」と崇められた。
神は人間のように病気になったりしない、という感覚がどこかにあったのだろう。
大正天皇の病気は新聞で公開され世間の評判となった。
それ以前の大正天皇は開かれた皇室を目指し
積極的に国民の前に顔を出した。
全国行脚を行い、自由に国民と交流ができる場所を望まれていた。
現在の皇室のようにとても開かれた性格で素直な方だった。
明治天皇の側室との間に生まれた大正天皇は唯一の男系の子孫ということで
皇位を継承したらしい。
明治天皇はおまえは天皇に向いていない、天皇は「空」であれ
おのれを捨てて、威厳を持ち畏怖される存在になれ!と
息子の大正天皇に向かって言い続けた。
大正天皇はそのことを不憫に思い、不肖の息子と自覚しながらも
懸命に努力して皇室の役目を勤めようとしていた。
本作はその大正天皇に生涯よりそった皇后陛下の記憶の物語でもある。
夫婦仲がよく4人の子供をもうけ生涯寄り添った皇后を演じるのは
初演に引き続き、松本紀保。松本紀保が本当にいい!
前回も思ったのだが愛情と皇室の節度と威厳が備わった人物である。
中庸をよしとし人の意見をよく聞き、時には覚悟を問う!
皇室に居るとはどういうことかを完璧に理解しており、
皇室としての自己をまっとうする、
と、同時に昭和天皇の母親として大正天皇の妻として
家族としての皇室の姿をそこに見ることが出来る。
皇室に生まれるという定めをまっとうしなければいけない人々の生き方を丁寧に追い、
そこに人間としての苦悩、国家の最高のリーダー?いや、理想?いや、
国家や国民を最高に想う人としての天皇陛下が描かれる。
そして、天皇周辺の有栖川宮伯爵や侍従の方々、
さらには国事行為を政ごとの面で司る、政治家の面々との交流が描かれる。
特に明治維新から太平洋戦争、日中戦争が終結するまでは
天皇は国家の高度な政治的な策略としても利用されてきた。
明治政府を樹立した政治家やさらには
軍人たちは天皇陛下の名のもとに国民を扇動したこともあるだろう。
その現実と天皇陛下との思いにどれだけの隔絶があり、
そのことを悩みながら受け入れていかざるを得なかった
苦難の歴史をこの舞台は再提示してくれる。
国益以上に大切なものがあるのではないか?
長い目で見て本当に大切なことを
皇室の方々は理解されているのではないか?
その本音を救い国益のみを重視する政治とのバランスを取っていくことが
これからの私たちにできることなのかのしれないと教えられた。
11月6日まで。


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