作・演出:青木秀樹。出演俳優15人。とある村の話。時代も場所もわからない。
ファンタジー小説に出てくるような設定。日本の土着的な感じもする山の中。
その閉ざされた村にある少女が嫁としてやってくる。
嫁は二人の夫である男(池村匡紀・阿部丈二)の第4婦人の役であり、
子どもを産むことが彼女のミッションとして役割づけられていた。
夫たち(なぜか二人)は第一婦人(浅羽万矢)そして愛人としての第二婦人(土井玲奈)
面白いことを考えて夫に言うことで寵愛を得ようとする第三婦人(ゆにば)を抱えている。
彼女たちには夫が二人いるという設定そして妻が愛人も含めて4人!
イヌイットの家族のような自由な恋愛を想像するが現実にはそうならない。
夫の一人はいつも愛人である第二婦人を夕食後に選び
寝間に連れていく。もう一人の夫はそういった気持ちがまったくない状態にある。
そもそも、この夫たちのいる岩瀬家と第一婦人の居た森村家がこの村に住んでおり
ある事件がきっかけでこうした関係が生まれた。そうしようと考え実行させたのが
山野中(やまのあたる)役の花戸祐介。
花戸は妻を殺し死体を埋めていたところにある岩瀬家の男に出会うのだが
その男は毒を飲み死んでしまう。
その男を殺した原因は森村家にあると言うことで、美しい森村家の娘(浅羽万矢)は
第一婦人として結婚させられる。しかし、彼女は望まない結婚ゆえか、
気がふれたようになってしまっている。
それゆえなのか?岩瀬家の夫は第二・第三・第四と妻を増やしていった。世継ぎを設けるために。
変な話だ。そして込み入った話なので
ここまで読んでもどうなっているのかわからない人も多いのではないだろうか?
要するに二人の夫と4人の妻&愛人と共同生活する二つの家族。
夫の岩瀬家は支配する立場、そして森村家は生涯の召使を求められる関係。
森村家は第一婦人(浅場)以外に葛木英(母親)と武子太郎(父親)が
召使として岩瀬家につかえている。この設定からの奇妙な状況が延々と続いていく。
青木秀樹の妄想の塊が大きくなったり小さくなったりして
変形しながら舞台上に提示される。
普通のわかりやすい物語はもはやそこにはないのだが、
ある種のイメージの変容を目の前で体験することが出来る。
演劇でしかなしえない奇妙な体験をしてもらおうと青木秀樹が
奮闘努力した結果がここにあるのでは?
今回劇中の音楽を担当したのは「yasuski」
サウンドデザインされた新たな音の世界がこの劇世界をさらに増幅させイメージを強化させてくれた。
バラバラのピースがうまく組みあがり
ギリギリ理解できるだろう演劇空間を作ろうとした「志」をたたえたい!
そしてさらなるこの試みの進化を見てみたい!
東京公演は終了。5月11日~14日に大阪公演がある。