女優の安達忍さんから、薦めていただいた作品。
梅雨明けの初日!錦糸町から歩いて向かう。徒歩15分とあるが意外と近かった。
前回は押上からふらふら歩いていたからなのか?
ロビーと劇場内は冷房がガンガンきいていて気持ちがいい。
暑い夏にふさわしい怪談話である。原作は噺家の円朝の「牡丹灯籠」。
原作は
http://www.aozora.gr.jp/cards/000989/files/2577_38206.html
で読むことが出来る。
「お露新三郎」「お札はがし」「栗橋宿/お峰殺し」「関口屋のゆすり」と全段が2時間に凝縮されている。
演出が斬新。
舞台真ん中に心棒が建てられており先っぽが左右に拡がり大きな布がかけられている。
上演中この幕が延々と回転し続けているのである。
あの時代の空気を再現したかったのだろうか?夜のシーンは徹底的に暗い。
月光を模したくらいの明るさの照明があり、さらには提灯や灯篭などで明かりを作っていく。
当時の様子はこんなんだったのだろう。
暗くなるので寝落ちに注意。
かくなる私も上演開始時にあまりの暗さに意識を失うことがあった。
物語は落語で聞いていたので話は入ってくる。
まったく内容を知らない人はあらすじだけでも読んでいかれるといいのでは?
チラシに演出の森新太郎が書いていたように
「もの静かに、淡々と、修羅場が繰り広げられるはずです」と。
まさにこの言葉通りの舞台だった。
陰惨すぎるという人もいるかも知れないが人を殺めるというのは
そうした身体感覚が必ずついて回るはずだ!と本作を見て思った。
刀で人を斬る、槍で刺すというのは大変なことである。
悪者は徹底的に悪者に描かれる。
円朝作「牡丹灯籠」は同じ円朝の怪談話「真景累ヶ淵」と並び称される
ピカレスクな噺の傑作と言われている。
何年か前に夏の本多劇場で立川志の輔が本作の上演をしたのを記憶している。
私が一番印象に残ったのが「栗橋宿」の下り。
松居一代と船越英一郎じゃないが、夫婦の修羅場が陰惨かつ残忍に描かれている。
妻を演じるのが松本紀保。夫を山本亨が演じる。
「お札はがし」で百両を元手に夫のゆかりのある栗橋宿へ行き
荒物屋となり成功するのだが、そうなると夫は飲み屋の女将さんに執心して、
というまさに松居さん夫婦の出来事が
週刊誌やワイドショーなどで取り上げられているようなことがここでも…。
人間の「業」というものは変わらない。
その「業」を極端に描いたのが山本亨の役なのだろう!
これを見て「ひええええ!」とあまりの残忍さにひいてしまうのかも知れない。
それが劇場での儚い夢だった!ということで現世での生活をがんばれる。
芸術がこうして心のケアとなる。
独特の怖さが残る舞台だった。
牡丹灯籠のおばに松金よねこ。お露に川嶋由莉。
その他、青山勝、児玉貴志(THE SHAMPOO HAT)、太田緑ロランス、
西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)、柳下大。豪華なキャストである。
7月30日まで!脚本:フジノサツコ、プロデューサー:綿貫凛。