いま、日比谷のシャンテシネでフランス映画社が配給していた、
「BOW30映画祭」という特集上映を行なっている。
Best Of the Worldというショルダーコピーとともに、
僕の学生時代の記憶に残る配給会社だった。
大学に入ってから、何かが吹っ切れたかのように映画を見始めることになった。
それから4半世紀の歳月が流れる。
同じ映画に対する感じ方や考え方は変化すれども、映画が好きなことは変わらない。
僕の映画体験の最初の頃の先生として、
フランス映画社配給の「BOW」シリーズに随分と教えられ、多大な影響を受けた。
今回その配給会社から、30年間封印されていた、ゴダールの映画が上映された。
原題は「Bande A Part」。
解説によると、クエンティン・タランティーノやヴィム・ヴェンダース、
ビクトル・エリセがゴダール映画のベストワンとし、
ファッションデザイナーのアニエスbもまた大好きな映画として挙げていた。
学生時代に見ていたら、いったいどう感じたのだろうか?
ゴダールの映画は20代だった頃の僕にとっては
睡魔との闘いだった。
しかし、しかし、今見て、何て洒落た映画なんだろうと思った。
1964年、東京オリンピックの年にこんなにも、青春真っ只中の若者と、
彼らのとりとめのないエネルギーとストレートな恋心を
面白くかつセンチメンタルに描いた映画があっただろうか?
フレンチトラッドの衣裳を身にまとった彼らは現在でも十分に洒落ている。
村上春樹の作風がここから影響されたのではないかと強く感じる。
村上春樹の初期の作品の雰囲気に近い。
それは、言葉で簡単に言い表せられるものではなく、感じるもの。
雰囲気を作るというチカラは、物語を紡いでいくことと同様にとても
難しいことではないかと思う。30代だったゴダールはそれを現実化させた。
ヒロインの「アンナ・カリーナ」の魅力に負うところも大きい。
彼女は撮影当時23歳。彼女を二人の男が取り巻く。
男二人に、女一人の構造。
現在では定番とも言える構造だが、当時は斬新だったに違いないと推測する。
男たちの役名はアルチュールとフランツ。
明らかにアルチュール・ランボーとフランツ・カフカからの引用だろう。
劇中で、名字はランボーという台詞が出てくる。
このような人を食った笑えるシーンが随所に登場する。
音楽:ミッシェル・ルグラン最後の作品だとか、
ジャン・リュック・シネマ・ゴダールというタイトルなどなど。
また、この頃から、すでに音に対する実験的なことを
行なっていたのだなと改めて認識することになる。
台詞や音楽や状況音のカットアウト、逆に、状況音の増幅などなど。
そしてココロに残る印象的なシーンが散見される。
カフェのフロアで3人で踊るマディソンダンスの格好よさ。
そしてルーブル美術館を9分43秒で駆け抜けるシーンの美しさ。
何故、このシーンにグッと来たのだろうか?
それを語る言葉が見つかるときが、
僕がこの映画を本当に理解出来るときと重なるのだろうか?