4年前の山形国際ドキュメンタリー映画祭で「標的の村」という映画を見た。
三上智恵さんという女性監督が沖縄に移住して制作したもの。
三上さんはもともと大阪の毎日放送の元アナウンサー。
その後、彼女は琉球朝日放送に転職して反対運動をしている人たちに出会ったのが
映画を制作するきっかけになったのだろう。
その後、三上さんは辺野古基地の建設に反対する
住民を追っかけ続けこの映画が完成した。
この年の山形国際ドキュメンタリー映画祭での市民賞に輝いた。
この映画は、また、キネマ旬報の
2013年のベストテンでも文化映画部門で第1位に輝いている。
本作は、この映画と同じ題材を扱った演劇作品。
作・演出は詩森ろば。
今の演劇界で最も優れた仕事をしている作家の一人である。
綿密な取材とリサーチを基に書かれた脚本は重厚。
沖縄の過去の事実のインパクトが強すぎる。本作の戯曲だけでも
優れた作品と言えるだろうが、
そこに、ここ数年で抜群にうまくなった演出の力でさらに舞台をぐいぐい引っ張って行く。
舞台の上に設置された11台のモニターが効果を発揮する。
観客はそこに居合わせるだけで彼女の思考の過程に寄り添いながら
沖縄問題について考えさせられる。
そんな作風の詩森さん率いる「風琴工房」最終公演である。
オープニングで「風琴工房最終公演!」という言葉を聴いて鳥肌が立つ。
しかし、詩森さんの活動が終わるわけではない!
詩森さんは来年から新たな演劇ユニット「serial number」を立ち上げて活動を始める。
2018年の6月から。
そのユニットで一緒に組む俳優「田島亮」が本公演にも重要な役で出演している。
東京から辺野古での基地反対運動のニュースを見て、
いてもたってもいられなくなり座り込みに参加しに羽田から飛んでやってきた。
映像制作会社に勤務している若きディレクターという役柄に三上智恵さんを重ねて見てしまう!
彼はここで運動をしている様々な立場の人たちと会話し対話しいっしょに運動をする。
同じ釜の飯を食べ団結する。彼らの正義と国家(日本国)や米国の正義がせめぎあう。
この演劇の三上さんが制作したドキュメンタリー映画との一番の違いは
狂言回しでもあるセジ(佐野功)が登場するところ。
セジはこの世のものではないもの。
彼が田島亮を沖縄の過去の歴史に連れていく。
それを見ているだけで沖縄の戦前から現在までの歴史が理解できる。
驚いたのは米国駐留軍人による沖縄の女性へのレイプ事件を語るシーン!
こんなに多くのレイプ事件が起きていたのかと唖然とする!
ということは、告発されず水面下で行われている事件は、
さらにものすごい数に上っているのではないだろうか?
映画「怒り」の広瀬すずのレイプシーンを思い出した。
それらの事実が俳優たちの口から語られ、日米の矛盾した関係が提示される。
安保条約を何十年も延長して基地は沖縄にあり続ける。
しかも日本国の税金が負担金として使われている。
いったい何が正しいのか?それを私たちは自分の頭で考えなければならないのだ!
と気づかせてくれる。
先日、まさに普天間基地の近くの小学校の校庭に米軍ヘリの窓が落下した。
児童の上に落下していたら、どうなっていたのか?
そんなことを改めて考えた。上演時間2時間10分。