作・演出:藤田貴大。子どもの日に向けた企画の舞台。
お子様向けシートがありそこには芝生が敷かれている。
そこに親子が座ってこの舞台を見よう!というもの。
子ども向けということもあり上演時間は約55分。
物語がそこで話されゲームの要素もあり楽しく見ることができる。
子ども向けにこうした仕掛けを織り込んでいるのだが、
藤田貴大はそれだけでは終わらない。
子どもの時にみんなが持っていた無邪気な想像力を、
今も信じている劇作家だからこその表現がすがすがしい。
本当に大切なものは何だろう?
めにみえないものが、この世界にあるのだろうか?
と想像するその姿がセリフとなって描かれる。
この舞台に子どもたちをいざなうのは4人の女優たち(伊野香織、川崎ゆり子、成田亜佑美、長谷川洋子)。
suzuki takayukiの生成りの衣装に身を包んだ4人が
まるでピーターパンに出てくるティンカーベルのように
見ている人たちを物語世界に連れて行ってくれる。
ある娘(長谷川洋子)が想像の森の中に入っていって
いろんな世界を体験する。
そこにはいろんな動物がいたり猟師がいたりして、
その人たちと会話しながら物語は進んでいく。
小さなころ、寝る前に親に読み聞かせしてもらったお話みたい!
その物語は過去の様々な物語から多くの引用がなされていたことが年を取るとわかる。
うちの父親が毎回語ってくれた「指七」の話は、
グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」そっくりだった!
布や映像や投げると大きくなって手で受けると
小さくなるオブジェや太鼓のバケツなど小道具が効果的に使われている。
映像を使ったトランプが出てくるお話やじゃんけんやしりとりなど、
ゲーミフィケーションされた仕掛けが登場する。
同時に描かれるのが、大人になって失ってしまった子どもの頃の想像のチカラ!
しかし、これを見ながら、実は、失ってしまったものではなく、
ただ単に忘れてしまっているだけのものなのかも知れないとも思う。
子どもの時に日常的に持っていた闇の中を想像するチカラみたいなものは
実は私たちの中にいつまでも残っているのだが、
いつのまにか私たちはそれに気が付かなくなってしまっているのではないだろうか?
そのたいせつな子どもの時の記憶をこの作品は呼び起こしてくれる。
現在の子どもたちと過去に子どもだったすべての人が持っている
「無垢で純粋でへんな想像の気持ち」
こそがほんとうに大切なものなのでは?
いくつになってもその気持ちを持ち続けて行こうぜ!
という藤田さんからのメッセージ。
原田郁子の音楽がいい!この音楽を聴きながら藤田のセリフが
女優たちから発せられる。その経験をするだけでも価値がある。
女優の長谷川洋子がいきものがかりの吉岡聖恵に似ている。
とても魅力的な俳優!
5月6日まで。