構成・演出:岩井秀人。平均年齢80歳を超えているキャストが出演。合計14名。
みなさんの年齢を足すと確実に1000歳を超えている。
岩井秀人は、彼らから過去の記憶の話を聴きそれを演劇作品に紡ぎなおしていく。
東京芸術劇場で昨年行われた、コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」も
似たような方法論で作られている。
子どもの作文を舞台にする試みとして実験的な創作。
この手法が応用され、現在、岩井さんも出演している「オドモTV」(NHK ETV)で
放送されている。音楽も踊りもこの番組むちゃ面白いです。
岩井さんは折り込みで徳永京子が書いているように
「小さな私」に徹底的にこだわった演劇作品作りを続けている。
その表現方法が岩井秀人個人とその家族のことから、
今回は、そこに出ている出演者に置き換わっただけで「小さな私」にこだわっているのは同じ。
「ワレワレのモロモロ」はその形式で創作された。
本日カンヌ映画祭で是枝裕和監督の映画「万引き家族」がパルムドールを受賞したが、
是枝裕和監督も徹底的に家族にこだわりいろんな方法で家族と言うものを描いている。
岩井さんもそのような意味で同じスタイルを貫き通しているのではないだろうか?
80年以上人生を生きて来た人たちの経験談には本当に様々なものがあるだろう。
本作を見て思ったのはここで描かれているのが
彼らの青春時代のことがとても多かった、ということ。
ここには構成・演出の意向が入っているのか?
それとも80歳代の出演者たちからおのずと出て来たものなどだろうか?
10代前半から20代前半くらいまでだろうか?
結婚して家族を作る以前のキラキラが描かれる。
目の前で演じているのは80歳代の劇団員なのだが彼らが女学生や男子学生を演じる。
そのギャップが途中からギャップに見えなくなってくるのが演劇のすごいところ。
逆に目の前で演じている彼らを見ていると60年から70年以上前の彼らの姿が
リアルに想像されるのである。
例えば、文学の好きな学生時代の話「チボー家の人々」「嵐が丘」「赤と黒」など
当時彼らがむさぼるように読んでいただろう小説がたくさん劇中に登場する。
戦後、活字に飢えていた人たちが本を読み、物資がない中、
本を貸したり借りたりしながら回し読みをしていた風景が見えてくる。
大変な時代ではあるが
彼らの精神がバーンと解放されており、とてもさわやかな気分になる。
蜷川さんのおやりになっていたゴールドシアターの公演には
プロンプターがそばにいてセリフを忘れると手助けしてくれる
という方法を取っていたのだが、本公演にはプロンプターはいない!
セリフが飛んだり戻ったりしたら回りの出演者が助けるという
相互扶助的な仕組みで上演されている。
これらの、すべての試みが演劇だからこそできることなのかも知れないと思った。
演劇の創作とは個々に向き合い、その地域に向き合う。
その個をきちんと見つめることによって、結果それが広く開かれたものになるのでは?
演劇という芸術行為の原初を見せられたような思いになり
胸の奥がいい意味でシクシクした。
オムニバス作品全6話からなる。上演時間約2時間弱。5月20日まで。