同一労働・同一賃金!と政府が大声を上げて
早く実行せよと、経済界に働きかけているが、なかなか実行されない。
そのリアルな現実を描いた演劇である。
重い社会風刺にはせず、軽いタッチで現実にある
奥深いものを描こうとする姿勢に好感がもてる。
舞台はコールセンターの休憩室。
ある大手企業から外注され、コールセンターの業務を一手に引き受ける会社で働く人たちが登場する。
(いわゆる大手企業の下請け業務)
ここで働く人の中に
本社とここのコールセンターを行き来するマネージャー(小寺悠介・青年団)がいる。
彼は横文字を乱発し、きれいごとを並べ立てながらも、
同時に派遣社員やアルバイトを厳しく管理しようとする。
彼自身は実際にお客様に直接対応するコールセンターでの
現場仕事をしたことがないらしく、現場の機微はわからない。
だが、本社のいいつけを守って、とにかくきちんとマネジメントして
会社の風土を作っていくのが彼のミッションだと思っている。
現場の意識を上げるためにPCの横に標語を書いたものを貼りだそう。
その文言は「プロの仕事をしよう!私たちは本当のプロだから、お客様のために!誠意を尽くそう!」
のようなもの。そのアイデアを出すためにマネージャーは正社員を集めて会議をする。
この現場で働く正社員たち(浜野隆之・下井草演劇研究舎&木崎友紀子・青年団)は、
あまり仕事が出来る人たちではなく、
現場では、優秀なアルバイト(伊藤毅・青年団)におんぶに抱っこ状態。
そのアルバイトの男性がいろんな仕組みを作って実作業を回している。
さらに、その他のバイト社員(植浦菜保子)、(岩井由紀子・青年団)(黒田圭・絶対安全ピン)
そしてパートの主婦(石川彰子・青年団)。
石川は実際に臨月が近いのだろう!大きなおなかで登場して、
それもまたある種のリアリティを与えてくれる。
人手不足が社会問題になっている今、
日本でも実際に外国人労働者を受けいれる会社が増えている。
英語を主体とした欧米企業のコールセンターなどは
もう何年も前からインドやフィリピンなどにある会社に業務全体を委託している。
人件費を安くして、その差額を商品の値引きなどとして還元し、
その激安商品を売って、企業は利益を得るというような仕組みが現実。
資本主義が成長を基本とした考え方に基づいて運用されている限りこの構造は変わらない。
同じ仕事をしていても賃金格差があるのならば、
何かを思うのは当たり前なこと。
その構造自体を変えていかないと、どこかに不満は溜まっていくだけだ。
みんなが幸せになるのは、成長が続いている時だけであり(日本では高度経済成長時代)、
その後、確実に現在の体制のままであれば、格差は拡がる。
トマ・ピケティが予言していたことがもう現実に起き始めてている。
その時に、私たちはどのように生きて行けば
満足感をもって暮らしていくことができ
幸せと感じられるのか?
「それは、どこにありますか?」
と作・演出の笠島清剛(青年団)に舞台を通して
問われているように思えてならなかった。
上演時間80分。7月1日まで。