西日本豪雨が大きな被害を残して復旧への道がこれからのタイミングで、
劇中にまさに大雨で土砂災害が起き事故が起きたお話が出て来るとは?
不思議なものである。
劇場で販売されている物販や食事などから一部を災害復興のために寄付をするらしい。
小回りの利く柔軟な取り組みはこうしたインディペンデントな演劇集団だから出来ることなのかも。
今回は会場を黒幕で覆うようなことをせずに
入口の大きなガラスをそのまま活かしている。
入口から普通にこの家に入ってくるのが見えるという構造。
入口の奥の往来で帰宅や外出、犬の散歩などをする人がそのままガラス越しに見える。
車や自転車も結構な数が通過する。
この広い倉庫のような場所に災害救助用のロボットの開発をしている兄(杉木隆幸)が
一人で住んでいる。誰かの家を間借りさせてもらっているらしい。
そこに、この場所を探し当てて兄のところにやってきた弟(田島亮)が
まさにその往来からやってくる。そこからこの舞台は始まる。
兄は食事を作っている。
この会場には大きなキッチンスペースがありそこをそのまま利用している。
カレーの香ばしいにおいがする。少し焦げていたのかな?
実際に劇中でカレーを食べるシーンがある。
久しぶりの再会を、カレーを食べながら語る兄弟。
20時からの公演でおなかがすいているので見ている方はたまらない。(涙)
このカレーを終演後限定〇〇食で食べることができる。
アフターバーという制度がこの公演にはあり、時間がある方は観劇後
ここでゆっくりと飲みながら演劇について語りあえる空間となるらしい。
ロンドンの劇場では1階がパブになっている小屋がたくさんあるらしく
観劇後1階のパブで飲みながら舞台について語りあうらしい。
そしてロンドンに住む彼らは夕食を済ませてから舞台を見ると聞く。
なんとも優雅な!
こうした習慣が日本にも根付く日が来るのだろうか?
兄は、自宅をふらっと出て突然いなくなった。
しかし、PCと携帯電話は持ち、近所に行くように見せかけて実は用意周到に。
以前、兄に何が起きたのか?
弟が訪ねて来て兄との会話から真相がすこしずつ明らかになっていく。
兄の受けた大きな心の傷を再生させようと弟は核心に迫った対話を行う。
その行為自体、自らをある種の犠牲にしながら行われるもの。弟も傷を負うのだ!
二人の真剣勝負である。
こうした核心に迫るようなセリフを書かせると詩森さんの筆は冴えわたる。
硬派なやり取りの中に奥深い心の葛藤が見え隠れするのである。
印象的だったのが、自ら制作した緊急災害用の救助ロボットを
実際の現場で使用する時にわくわくした感覚を持つと描いていること。
災害と言う悲劇に立ち向かうのにかかわらず、
その環境に役立つロボットが実際の現場で試されることを心待ちにしているという気持ち。
臨床実験を経て科学者の好奇心はより満たされていくのだ!というリアルが描かれる。
兄弟や家族の物語でもあり、そして科学者としての兄弟の物語でもある。
上演時間60分少々。16日まで。