構成・演出:早坂彩
早坂さんは大学院で「ドキュメント演劇」を研究されていたらしい。
私が最初に「ドキュメント演劇」を意識したのは
「フェスティバル・トーキョー」でのドイツのリミニ・プロトコルという
集団が行っていた演劇・パフォーマンスだった。
彼らの上演はいつも従来の演劇の枠を完全に超えていて刺激的だった。
例えば「100%トーキョー」(2013年のF/T13での上演)という舞台が
池袋のプレイハウスで上演された。
詳細はhttps://haruharuy.exblog.jp/21069595
その舞台には実際に東京に住む100名の人が出演していた。
そこから、例えば「一人暮らしの人」と「2人で暮らしている人」
「それ以上の人」みたいな質問に合わせて出演者が移動していく。
実際のこと、というのはそれを目の当たりにするととても興味深い。
演劇ではその当人が舞台上に出ていたりするのでなおさら。
NHKで「72時間」という定点観測のドキュメンタリー番組をやっているが、
その番組も、その場所にいる人たちを通して彼らの人生が見えてくるから
人気があるのではないか?
早坂さんは、今回は、従来の「ドキュメント演劇」とは
異なる方法の作品作りにトライされたらしい。
というのを、実は、アフタートークで知ることになる。
リミニ・プロトコルのようなものを想像していくと。
「????」というような結果となったかも知れない。
折り込みに、今回は上演作品として、
チェーホフの「たばこの害について」、シェイクスピアの「マクベス」、
清水邦夫の「楽屋」、梅崎春生作の「蜆」「幻化」などを
引用していると書かれていた。
早坂さんは、俳優たちが引用した作品を演じることによって、
これは虚構か現実か?という問いを突きつけようとされたらしい。
4人の俳優は交互に早坂彩を演じ、男女の役割も逆転している。
役割が変化し続けるので見ている方は
この俳優さんはいまいったいどんな役を演じているのかがわからなくなる。
俳優たちと相談しながら稽古していたら結果こうなったということらしい。
虚実ないまぜになって何が本当なのかわからない、というテーマは面白い。
青年団と平田オリザを丹念に追いかけた想田和弘監督のドキュメンタリー
「演劇1」「演劇2」は、まさに虚実ないまぜがよーく理解できる作品である。
どこまでが演技でどこまでが素なのか?がわからなくなる。
演劇に携わる方々はその傾向が強いのだろう。
先週から拡大公開となったインディペンデント映画「カメラを止めるな」も、
どこからが現実でどこからが虚構かわからない世界をとても上手に作り上げた。
映画に対する愛情あふれる傑作だった。
本作は、それらの作品とは違い、虚実の感覚が見えにくい。
次回はぜひ、早坂彩が演出する別のスタイルの「ドキュメント演劇」を見てみたい。
上演時間90分少々。8月5日まで。