MITAKA”Next”Selection19th参加作品。
今回のこの公演、特殊な形態で上演されることになった。
HPなどにも書かれているが、作・演出の越寛生が体調不良のため
参加することが出来なくなり、台本も完成をすることができず断念!
出演者の二名の俳優さんも、出演しないということになった。
すわ、公演中止か?というところ
出演者やスタッフ、そして、プロデューサーが一丸となって、
期限内に作り上げたというのが今回の作品である。
私自身も業種は違うが、同じプロデューサーという肩書を持つものとして
耳が痛く他人事ではない。
残った出演者たちは、それまで越さんが書き溜めていた
草稿やイメージスケッチ的なものを参考にしながらそれぞれの俳優たちが
エチュード的に立ち上げていった断片を組みあわせていき、
本作が完成したのではないだろうか。
その妙にナマナマしいドキドキ感の魅力が、この舞台にはある。
それは当初の目標ではなかったかもしれないが、
トラブルに対処するためにスタッフが総力を挙げて
必死で完成に向けて頑張る!という構造は、
現在大ヒットしているインディペンデント映画「カメラを止めるな!」と似ている。
本作は大きく三つのシーンから成り立っている。
一つ目は、大学の映画サークルの仲間である「楓さん」を自宅に呼ぶというシーン!
「楓」役が最初女性の俳優で、
その後、まったく同じことを「楓」という名前の男性役が演じて行われる。
別れてしまった二人が久しぶりに男性の自宅で会うことになって、
その男性は「楓」とよりを戻したいというもの。
ベッドシーンがあるのだが…。
二つ目は、ひきこもりの少年(といっても大学生?)と、
それを心配する母と、少年の部屋に登場するアニメのキャラ。
このキャラは少年がひそかに思いを寄せている少女の顔をキャプチャーしているという設定。
いま流行りのバーチャルユーチューバー的なキャラを
実際の生身の俳優が演じる。
コスプレをした生身の俳優がそこにいるという感覚は演劇的であり
二次元の世界を愛する人たちはこの設定をどのように感じるのか?興味がある。
そして、三つめは近未来の話。
戦時中でどこかと戦争をしている。
男たちはみんな戦争に駆り出されている。
少女の子ども時代、お父さんが家を出て行ってしまった。
お父さんの勝手でいなくなり、母と娘の二人で暮らしている。
舞台はそれから10年後。娘は成人したのだが、
その後戦争で亡くなったことを知らされた亡き父の遺影を
いろんな場所に飾っている。
今も父親のことを思い続けている娘。
それをあまりよく思わない母親。
そこに娘と以前付き合っていた男性がもうすぐ戦争に行くということで
いきなりこの家にやってきて…。
戦争の非道な本質が、この荒唐無稽ともいえるシチュエーションからあぶりだされてくる。
俳優たちは、基本この三つのシーンに別々に分かれて登場している。
オムニバス劇のようでもあるのだが、そうとも言えないというのがこの劇の難しいところ。
話者は誰なのか?越の下書きなのか?俳優たちのエチュードなのか?
それとも?
惜しいのはこの三つのエピソードをつなぐための何かが必要だったのかも?
と言うこと。越はこれを見てどう思うのか?
そして俳優たちはこれを見て客観的にどう思うのか?
ということが、これから問われるだろう。
その後日談も含めて、次回作がどうなるのか?興味津々でもある。
上演時間1時間55分。9月2日まで。