演出:宮藤官九郎、クドカン演出のシェイクスピア劇。
2019年1月から放送されるNHKの大河ドラマ「いだてん」で
超忙しいし余裕もないだろうクドカンが本公演の演出を受けた理由が朝日新聞に掲載されていた。
三宅弘城がロミオ役でキャスティングされていたこと。
三宅ロミオを演出してみたいな、とクドカンは思ってこの仕事を受けたそうである。
50歳の三宅が16歳のロミオを演じる。それだけで面白そう。
しかもナイロン100℃の看板役者でもある三宅の特徴は
背の低さそして何故かすばっしっこく動ける驚異の身体能力!
それをクドカンは知っていただけに創作者「魂」に火を点けたのではないか?
シェイクスピアの翻訳は松岡和子さんが手がけたもので今回の上演は行われた。
松岡先生がクドカンが選択した劇中のセリフやシーンが奇抜で、
ここを選んだのかあああああ!と驚かれていたらしい。
本作を見ると同じ原作をベースにしても、どこに注力しどこを拡大しどこをはしょるか!
で大きく舞台の感じが変わることが良くわかる。
そして本作は多分、日本でシェイクスピアの名前を知らない人が見ても、
もっともわかりやすいシェイクスピア劇になっていたのではないだろうか?
ヒロインのジュリエット役は若くてかわいい森川葵が演じた。
スターダストプロモーション所属の23歳。
雑誌「セブンティーン」の「ミスセブンティーン」に選ばれて芸能界に入ったらしい。
初舞台にして初主演らしい。
落語などでも同じ古典落語をやるのでも
噺家がどう解釈してその原作を読み解き演出し演じるかによって見た人の印象は大きく変わる。
それが、逆に同じ原作を何度見ても面白い!ということにもつながる。
見ていて思ったのはシェイクスピアの生きていた時代の演劇とは
実は本作でクドカンが演出した笑いがどっかんどっかんと起きて
深刻ぶらずにライトな感覚で楽しめるものだったのではないだろうか?ということ。
猥雑でどこか下品で、それを見た人たちが明日も生きていくためのチカラになるようなもの。
芸事とか芸能とはそもそもそういうものだったのではないか?
木ノ下裕一という32歳!にまったく見えない、しかも喋っているのを見ると
どこから見ても大阪のおばちゃんにしか見えない男が創る「木ノ下歌舞伎」には
まさに「歌舞伎」のそもそも持っている猥雑さや大衆性が描かれる。
本作はそれのシェイクスピア版ではないのか?
クドカンは無意識に行っているのだろうが、楽しみながら遊びながら舞台を創っていると
結果そうなってしまったんです!といういい意味でのエクスキューズが聞こえてくる。
それを手助けするのが劇達者な脇役たち、田口トモロヲを初めとし、
安藤玉恵、大堀こういち、皆川猿時、池津祥子などのクドカンには欠かせないメンバーたち。
また、勝地涼が独特なキャラの役を演じ、その動きが印象に残る!
また本作でこの人面白いな!と思ったのが今野浩喜。
お笑いの「キングオブコメディ」のボケ役だったらしい。
今野の持っている味がこの舞台では存分に生かされていた。
調べてみるとものすごい数のドラマに出演されていることを知る。無知は恐ろしい。
こうした個性ゆたかな人たちが作り上げて
独特の輝きを持ったまったく異質なシェイクスピア劇が生まれた。
上演時間2時間10分。12月16日まで。
その後、新潟、大阪、愛知での公演がある。