「イザ~ぼくの運命の人」戯曲リーディング(@シアタートラム)
原作:ヴォルフガング・ヘンドルフ、上演台本:ロベルト・コアル、翻訳・演出:小山ゆうな。
チラシに「pictures of your true love」と書かれてあった。
昨年、同じ劇場で「チック」という作品が上演された。
若々しくみずみずしい世界観が提示され、昨年の演劇界で話題となった。
結果、小山さんは、読売演劇大賞の優秀演出家賞、小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞した。
本作はその「チック」のサイドストーリー。
「チック」で二人の少年が車の旅の途中のゴミの山で出会う少女、イザ。
彼女がそこにやって来るまでの物語が語られる。
戯曲リーディングとあったので
パルコ劇場でレギュラーの公演となった「ラブレターズ」みたいに俳優が
椅子に座って淡々と戯曲を読むのかな?と思ったら、
まったく違う演出がなされており、演劇の本公演に限りなく近い感覚の上演だった。
イザを演じるのは北乃きい。久しぶりに彼女の芝居を見た。
こんなに声が魅力的な俳優さんだったのか?と
今までのイメージと違った一面を見ることができた。
共演は「チック」にも出演していた篠山輝信。
輝信さんがここに登場してくる様々な役を演じ分ける。
イザがこれまで出会ってきた人たちを。
シアタートラムの劇場にめいっぱい小道具が置かれている。
これらの小道具が、本作が進んでいくにしたがって物語とリンクしていく。
二人の俳優は手には台本を持っているが、それ以外は、立ち位置や座り位置を変え、
二人の俳優たちは実際に会話しているように見え、
クモのエピソードなどもアイデアのある演出がなされ
リーディングとはまったく違った印象。
本作を「チック」と並んで同時期に見ると絶対面白いのでは?
ちなみに「チック」は2019年夏にシアタートラムで再演が決まった。
イザが8歳くらい(?)の少女だった頃から14歳(?)になって
家出をし一人で旅をするところまでが描かれる。
少女が初潮を迎え思春期となり少女がだんだんと大人になっていく
その微妙な年代が扱われている。
その時の壊れそうな、しかし、みずみずしい感覚を演出の小山ゆうなは丁寧に掬い取る。
「チック」と同様にこれも「アオハル」的な若き青春を描いている。
葛藤や困難を受け容れながら前に進み続け力強く生きていってくれ!
という作家ヘンドルフの想いが伝わってくる。
自分が生きていてよかったのか?というようなことを感じる
10代の前半の繊細なココロをユーモアも交えたポップな表現で描き出せたことは、
この作品の大きな魅力なのでは?
そして、その感覚はいくつになってもみんなの心の中に残っているからこそ、
本作を見るともう一度その部分が刺激され気持ちが動かされるのかも知れない。
また、国広和毅がギターで生演奏をしているのがいい!
しかも、劇中に歌が挿入される。
北乃きいの歌がむちゃうまいのに驚いた。
俳優にきちんとマイクを仕込んで
セリフ、歌、ギター演奏、そして効果音などのサウンドがうまくミックスされていた。
このサウンドデザインのセンスの良さも気持ちよさにつながっている。
音響は小笠原康雄。