前回の「暁の帝壬申の乱編」に次ぐ第二弾!
物語は前作から続いているが、本作を単体で見ても十分楽しめる。
余裕があれば劇場で配布される折り込みチラシの中に
あらすじが書かれているので見てから観劇すると理解が速い!
もちろん日本の古代史に詳しい方はそれも不要だろう!
また販売されているパンフレットには配役の相関図が書かれており、
それがさらに物語を理解するのにわかりやすい!
Wキャストでの上演。私が見たのはCAST「藍」。
ヒロインを演じるのは「十碧れいや」。彼女は宝塚出身。
昨年の7月に退団されたらしい。
前列の席は彼女のファンと思えるような方々が熱心に舞台を見ていた。
宝塚ファンの観劇スタイルの行儀の良さには頭が下がる。
舞台は俳優と観客が一緒になって作っていくものだ!
ということが実感として伝わってくる。
今回は、プロデューサーのたちばなやすひとが脚本も担当している。
前作と大きな違いはその脚本から見えてくる人に対する捉え方の深さ!
人間は決して強いだけのものや弱いだけのものではない。
善悪や正義などというものは物事の一面でしかなく、
人間というものはそのどちらにも変化しもっと複雑なものだということが前提にある。
二元論で片づけられない物事の捉え方が物語世界を豊かなものにしていく。
たちばなさんに向けて
これを見た方から「難しかった!」という意見をいただいたことがあったらしい。
折り込みチラシを見ないで歴史的な知識がまったくなくても、
「そんなことはない!」と声を大にして言いたい!
史実をベースにした大河ドラマ的な舞台。
ただ、NHKの大河は飛鳥時代などをあまり取り上げたりはしない。
また、古代の日本をテーマに物語を描く「劇団☆新感線」とも違う!
「新感線」は物語が独創的すぎて史実を大きく超えたイメージの世界に拡がっている。
なので、本作はわりと真面目に古代史とそれにかかわった人たちの物語として描かれる
という意味では、歌舞伎やシェイクスピア劇などと通底する何かがあるのかも知れない。
本作の骨格にあるのは国家がどのように生まれ、その国を誰がどう治めていくのかという話。
君主の治世がどのように行われていくのか?
どうしたらクーデターが起きてしまうのか?そしてそれは何故か?
というような根源的な問題が見えて来て面白い。
そして人同士が争い合い権力を得ようと命をかける。
私たちのそのような営みは決して絶えることがなく今も続いている。
独裁政権がなぜ生まれるのか?
人民たちはなぜ独裁者に支配されるのか?
独裁政権は今の世の中にもあり
それは古代から常にどこかで生まれ続け今に至っている。
こうした事柄が本作の中に
エンターテイメントの仮面をかぶりながら描かれる。
また、並行して親子の情愛、兄弟の確執、我が腹を痛めた子とそうでない子との区別、
許されぬ愛、などなど、物語の中に様々なエピソードが描かれる。
和歌が多用されるのだが
和歌のテキストが舞台に投影されるといいなと思った。
理解が深まったかも。
このリリーズ、前作から続いていることを考えると
「スター・ウォーズ」のシリーズのような強力なコンテンツになっていけるのかも知れない。
2作目となって演出(伊藤靖朗)がこなれ、
丁寧にキャスティングされた俳優たちは決してイケメンや美女というだけではない。
「さらら」に仕える女中の志斐役の七味まゆ味が印象的。
上演時間2時間10分!23日まで!