昨年上演されたものの再演らしい。本作で神里雄大は岸田戯曲賞を受賞した。
チラシに野田秀樹の選評が書かれていた
「南米に生まれた彼にしか書けない、
その特殊な身の丈が作り出した、
他にはない世界である。」と。
神里は1982年ペルーのリマで生まれた。
実は今年、GW「令和」になる前の連休を利用してペルーへ1人旅に行った。
独特な環境の初めての南米は戸惑いながらも
温かく面白い人たちがそこにいた。
美味しい料理・雄大な自然とともに
そこで、生きる人たちに魅了された。
アンデスの山々の独特な風景は
強烈な印象を私に与えてくれた。
神里のお父さんは沖縄出身でその後ペルーへ移民した。
神里はその後パラグアイ共和国、
アメリカ合衆国などで過ごしたらしい。
常に異邦人的な視点で世界を見ていたのだろうか?
その彼が世界中を経験したことが
この戯曲に書かれている。
まさに彼にしかかけないもの。
上演はスペイン語で行われ、
セリフもすべてスペイン語。
なので劇場では英語と日本語の字幕が用意されている。
アルゼンチン出身の俳優3名とブラジル出身の俳優1名。
お父さんの遺灰を散骨にいく過程で様々な風景に出会い様々な人と出会う。
まさに旅人。漂泊の詩人という言葉があるが、
本作はまさに漂白の詩人「神里雄大」の世界を語る散文詩と言えるのかも知れない。
その場所、場所で経験したこととそこで感じた旅人としての異邦人としての
神里の言葉が紡がれる。
常にここではないどこか!
に行こうとしているかのような感覚がそこにはあり
そこはかとない無常観が漂う。
会場は自由席。整理番号順に入場する。
どこで座ってもいいのだが、いろんな座れる場所があり早いもの勝ちでもある。
ソファや二段ベッドベンチやバーカウンターなどがあり
そのシチュエーションが、実は、本作の中に登場する物語とシンクロしている。
この作品の持つ独特な感覚は好き嫌いが分かれるかも知れない。
しかしこうしたテイストの舞台はオンリーワンとも言える。
これから神里はどこへ向かっていくのか?
ちなみに題名の「バルパライソ」は、南米はチリにある海岸沿いの
カラフルな建物がたくさんある都市の名前らしい。
「天国の谷」という意味だそう。
上演時間100分くらい。25日まで。