世田谷パブリックシアター、シアタートラム ネクスト・ジェネレーションvol.12
こうした新進の劇団に注目して毎年こうした試みをやっているのは
このシアタートラムと三鷹市芸術文化センター、そして
民間の花まる学習会王子小劇場が、行っている佐藤佐吉演劇祭など多くはない。
面白いと思う劇団や劇作家・演出家を見つけ出し、
公演をするという大変な手間がかけられている。
主宰者の方々は日々、新人劇団の公演に足を運び新進気鋭の劇団を
発掘しようとされているんだろう!
私たちはその努力をしないまま、こうした公演を見て、
この劇団初めて見たけど面白いからまた見よう!
などと観劇の幅をどんどんと拡げてくれる。
この「悪い芝居」もまったく聞いたことがなく初観劇!
関西弁を話す俳優さんがたくさん出ていたので関西の劇団なんだろうか?
HPから引用する。(以下)
2004年12月24日、路上パフォーマンスで旗揚げ。
京都を拠点に創作をしながら、東京・大阪など各地へ作品を持っていくスタイルの集団。
メンバー編成は紆余曲折を経て、現在17名となる。
ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を、刺激的な言葉と狂信めいた
身体と幻惑かつ耳鳴りじみた心地よい音楽に乗せて勢いよく噴出し、
劇世界と現実世界の距離を自在に操作する、観客の想像力を信じ切った作風が特徴。
「現在でしか、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」を芯にすえ、
中毒性の高い作品を発表し続けている。(以上)
この作品を見て、この説明を見るとなるほどな!と思う。
今年は映画の「JOKER」がたくさんの観客に見られているが、
本作を見てこの映画のことを思い出した!
ある種の格差が拡がって希望が見えなくなって来ている時代。
その閉塞感は簡単には突破できない!
であれば別の世界に安住の地を見つけようとすることは
人間の本性なのではないだろうか?
それがゲームの世界であったりソーシャルの世界であったり。
インターネットの爆発的な普及に伴ってそうした隠遁行動が
ある意味、加速している。
その中でしか生きていけないという人たちの
セーフティネットがデジタル革命で築き上げられている。
そんなことを感じた。
「JOKER」が1970年代前後の時代を扱った。
本作は現在を扱っている。
「JOKER」はTVのバラエティショーに出演するが、
ここでの人たちはその表現が「YouTube」に変わっている。
個人での情報発信が簡単になった時代
バーチャルな世界と現実世界の境目があいまいになったと感じている人も多いのではないだろうか?
本作ではその感覚を実際の動物園に置き換えて戯画化して描いている。
村上春樹の「世界と終わりとハードボイルドワンダーランド」などにもある
二つの世界を行き来する物語。
その世界観と彼らの放つセリフをどう感じるかで
この舞台の評価がわかれるのかも知れない!
決して読後感がさわやかとは言い難い!
が、それは映画「JOKER」も同様である。
今の時代だからこその表現なのではないだろうか?
実際の演奏メンバーが舞台奥に居て
生演奏をすごい迫力で音楽を奏でる!
その大音量のサウンドデザインとディストピア的な感覚が印象に残った。
まさに映画「JOKER」的な演劇的世界。
初日に観劇。満席だった!
この激しい舞台をあなたはどう見るか?
恋住闇(こいずみ・やみ)役の田中怜子がいい!
彼女の大阪弁もとてもいい!
上演時間約2時間。12月8日まで。