作・演出:桑原裕子。
豊橋には行ったことがないのだけど!
こうしたプロダクションをちゃんと行うスタッフがいるのが素晴らしい。
2017年の12月に上演されたものの再演。
同じキャストが集まっての上演。東京公演の初日観劇。
本作は第5回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞を受賞するとともに、
戯曲が「第70回読売文学賞戯曲・シナリオ賞」を受賞したらしい。
それもあってか前評判が良かったのか補助席も出る満席状態での公演となった。
先日「熱海殺人事件」を見た。
そういえばこの舞台に出ておられる平田満さんと井上加奈子さんが
「熱海殺人事件」の熊田刑事とハナ子を演じていたのは有名な話。
つかこうへいの舞台がご縁でこの二人は結婚した!
そんな二人が一緒に舞台で演じるのを見るのは実は初体験!
見終わって、戯曲の上手さと怖さがないまぜになった
素晴らしいものだったことが良く分かった。
読後感がまるで向田邦子のドラマやエッセイを見たり読んだりしている感じ。
そしてセリフのしゃべり方が山田太一のドラマを見るような感覚。
桑原裕子は1976年生まれの43歳と言う若さなのに
どこか老練な感覚を持っているのが面白い!
年配のファンが増えるのではないだろうか?
が、そうした感覚をベースにしているのだが
時々現代的な不条理さやクールさが出てくる!
ネタバレになるので言わないが小林勝也と中尾諭介の関係の描き方などに
そのような感覚を見ることができる。
安心して見ることができ、
いくつかのエピソードや設定、キャラクターの作り方などが現在風。
そのバランスがとてもいい!
もしかしたら、桑原さんはこれからの新たな「ホームドラマ」を
書くととてもいいのでは。
ある団地の和室の八畳間が今回の舞台!
旦那が亡くなりそこに一人で住む井上加奈子!
近所で大きな火災が起きて井上の学生時代の同級生である
平田とその妻の増子倭文江が非難し訪問してきたのだった。
しかし、そこには上の階の住人の小林勝也と
彼と生活をともにしている青年の中尾諭介の3人が
ほぼ同居しているという奇妙な構図。
さらには平田の娘(多田香織)もやってきて…。
という、夜から朝にかけての物語。
そこでセリフを通じて明かされてくる関係性が面白い!
多様な生き方を認め、とにかくその場所で暮らしていくということを
無条件に受け容れている登場人物たちを見て、
すべてのキャストたちが愛おしくなる。
これは「禅」の思想?
ウェルメイドだがそこにそこはかとない怖さや奇妙さが一緒になった
独自の世界が描かれた。
上演時間1時間50分。12月23日まで。