皆川明さんというファッション&テキスタイルデザイナーを知っていますか?
先日NHKの日曜美術館で、皆川明さんのブランド「ミナペルホネン」の展覧会
を紹介する番組が放送された。
私が初めて皆川明さんの
名前を知ったのは、20年近く前だったか?
ミナペルホネン以前に「ミナ」というブランドでおやりになっていたころ
演劇の好きな蟹沢さんとガーリーなるものとは?みたいなことを話していたときに
教えていただいたブランドだった。ちょうどそのころ皆川さんのブランドを代表させる
「タンバリン」の模様のテキスタイルを使った洋服が登場した時期である。
私は何かの雑誌か何かで皆川さんがデザインしたコートに目が釘付けになった。
そのコートは木の電柱に電線がかけられており、雪が降っているという絵が
コートに刺繍されているというもの。
展示会で拝見したのだが、経年変化して生地が擦れると
その擦れた奥に黄色の裏地が透けて
見えてくるというものだったことを初めて知った。
これは何十年もこれを着てくださいよ!という哲学の表れ!
いいものを大切にいとおしみながら長く使う、という哲学がこれから
改めて見直さなけらばならない時代。
SDGsやESG投資などの言葉を最近、毎日のように目にするが、
私たちは19世紀以前はそうした暮らしを行なっていて、
自然と調和して生きていたのではなかったのだろうか?
産業革命などによって化石燃料を使ってエネルギーの大量消費が始まり
使い捨てが普通になってしまった今を、
ようやくみんながこれではいけないのでは?
と気づき始めた。
皆川明さんは、これまでの資本主義経済の潮流から距離を置いて
本当に私たちがいいと思えるもの、大切と思えるものを、
ものすごい熱量をかけ
手間をかけてつくり続けていたのではなかったのだろうか?
その哲学がまさに今回の展覧会のタイトル「つづく」につながっていたのだろう!
(ADは葛西薫さん、写真は上田義彦さん)
今年25周年を迎える皆川さんのブランド
「ミナペルホネン」の持つブランド哲学は大きい。
その皆川さんがこの10年ほど書き続けた言葉を集めて
演劇作品として構築したのが本作である。
マームとジプシーの藤田貴大は以前から皆川さんがデザインした衣装を舞台衣装として
取り入れて演劇作品を作っている。
描こうとしたいことや考えていることの根源的な世界観が近い二人だけに
「自然とともに生きる」というような深淵なテーマが伝わってくる作品となった。
青柳いづみ演じるクマの「セバスチャン」
そして、森の中に住む絵描き(これは皆川さんのことなのだろうか?)
そして鳥なのだろうか?のヘレン?
と森の中にやってくる狩人などが登場する。
皆川さんの描いたイラストが皆川さんがデザインし中村好文が建築した
フィボナッチ数列に基づいた楕円形の家の壁に投影される。
同時に出演者たちは、ミナペルホネンの洋服を着てミナペルホネンの
小道具を使用する。会場が展覧会場の中での上演だったので観客の
周りにはミナペルホネンがあふれている。
藤田さんは皆川明さんの言葉を再構成して新たな童話のような世界を創作された。
クマのセバスチャンが愛おしい!
涙を流しながら冬眠をせずに冬を越す
クマのセバスチャン!
その繊細ではかない一瞬一瞬を愛おしむ気持ちが全身で感じることができて
「すーっ」とした気持ちになった。
久しぶりの舞台鑑賞だったが
やはりアートには人の気持ちをいやし再生させてくれるものが絶対にある。
今年もアート、よろしく!